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再エネ主力電源化時代! 知っておくべき基礎用語(3)WMB(We Mean Business)

— SDGsやRE100/EP100/EV100など多数のイニシアティブと連携 —
2020/02/06
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

「気候変動」から「気候危機」といわれるようになるほど、地球温暖化は急速に進んでいる。日本においては、台風15号や19号による電柱の倒壊による大規模停電や、豪雨による水害による多大な浸水や家屋の倒壊、あるいはオーストラリアの長期にわたる山火事では日本の面積の半分近くの森林や農地が消失するなど、地球温暖化における異常気象による甚大な被害が相次いでいる。
気候危機の原因となっている温室効果ガス(CO2)をストップし、脱炭素に向けて多くのイニシアティブが活発になっている。これらのイニシアティブはSDGsやRE100/EP100/EV100などと連携を深め、取り組みの内容も深化している。ここでは、注目されるWMB(We Mean Business)の全体的な取り組みと関連するイニシアティブについて整理していく。

WMBはプラットフォーム

〔1〕WMB:温暖化対策はビジネスである

 2015年12月のCOP21で合意された「パリ協定」の前年の2014年9月、低炭素社会への移行を促進させることを目的として、WMB(We Mean Business)という、世界の有名企業および投資家らによる連合体が結成された。We Mean Businessとは、「我々は本気で温暖化対策(現在はパリ協定)をビジネスの問題として考えている」を意味する。

 企業や投資家は、WMBを構成している多数のイニシアティブ(例えば後述するSTBiやRE100など)に、1つ以上誓約(コミットメント)注1する形で加盟することができる。すなわちWMBは、企業や投資家と国際機関(多様なイニシアティブ)をつなぐ、プラットフォームの役割を果たしている。

 WMBに参加する企業は、2020年1月28日現在で1,176社、その合計の時価総額は、24.8兆米ドル(約2,700兆円)にのぼり、誓約の総数は1,778に達している。さらに、WMBはこのような活動に加えて、これまでに複数のレポート注2を公表し、気候変動対策への提言を行っている。

 WMBは、表1に示すような企業や投資家が温暖化対策を推進している国際機関、シンクタンク、NGOなどが、①連合パートナー(7組織)、②協働パートナー(16組織)、③ネットワーク・パートナー(53組織)という3層構成のパートナーによる、巨大なプラットフォームを運営している。

表1 WMBに関与する国際機関や企業連合など組織例(2020年1月現在)

表1 WMBに関与する国際機関や企業連合など組織例(2020年1月現在)

出所 https://www.wemeanbusinesscoalition.org/partners/

〔2〕7つの領域における各イニチアティブの活動

 WMBを構成する各イニチアティブは、このプラットフォームを通じてお互いに連携しながら、図1に示すような、ネットゼロ(Net-zero)、エネルギー(Energy)、都市(Urban)、土地(Land)、産業(Industrial)、実現に向けて(Enablers)、回復力(Resilience)の7領域において、各種の取り組みを広めるための多様な活動を展開している。

図1 WMBの7つの領域と活動例

図1 WMBの7つの領域と活動例

SBT:Science Based Targets、科学的根拠(IPCCの1.5℃特別報告書)に基づいたCO2排出量の削減目標。パリ協定の2℃目標に整合した「CO2 排出量の削減目標」を設定するよう求める国際連盟。2014年9月設立
LCTPi:Low Carbon Technology Partnerships initiative、低炭素技術パートナーシップイニシアティブ。気温上昇を2℃未満に抑えるための、企業と政策決定者のための技術パートナーシップのプラットフォーム
SLCPs:Short-lived Climate Pollutants、短命な気候汚染物質(メタン等)
BELOW50:持続可能な燃料市場の拡⼤。バイオ燃料などの需要を拡⼤し、化⽯燃料の利⽤を50%以下に抑える取り組み
カーボンプライシング:炭素価格付け。炭素の排出量に価格付けを行うことによって、温室効果ガスの排出量を削減すること
⽔の安全保障の改善:責任ある水の管理によって、気候変動による⽔への影響の緩和や、省エネで⾼品質な⽔の供給を促すこと
出所 https://www.wemeanbusinesscoalition.org/take-action/ をもとに編集部で作成

 例えば、図1の②エネルギー領域において、

  1. 「RE100」は、企業の事業運営を100%再エネによって行うことを目標、
  2. 「EP100」は、企業のエネルギー効率を大幅に(倍増:100%)引き上げることを目標
    とするイニシアティブとして活動している。「RE100」は2019年12月に、『RE100 年次報告書』を発行した(後出の図3左参照)。
     また、図1の③都市領域において、
  3. 「EV100」は、企業で100%電気自動車(EV)を使用することを目標
    とするイニシアティブとして活動している(表2参照)。

表2 本記事中の主な用語解説

表2 本記事中の主な用語解説

JCLPとTCGは、日本でのRE100/EV100/EP100の普及拡大についてパートナーシップを締結している(2017年4月)。
出所 各種資料をもとに編集部で作成

WMBとSDGsの連携

〔1〕WMBの7つの連合パートナーとRE100/EP100/EV100の位置づけ

 国連が推進する、①17の目標を掲げたSDGs(2030年に向けた持続可能な開発目標)と、②地球温暖化対策の新枠組であるパリ協定(COP21)は、車の両輪のように取り組まれ、企業や社会にとって避けて通れない重要なビジネス基盤あるいは社会基盤ともなってきた。

 図2は、WMB連合とSDGsが連携しながら進展している様子を示した図であり、WMBの中核となっている7つの連合パートナー(表1、図1参照)のうち、TCG/CDPとRE100/EP100/EV100の関係を、ある1断面(1ケース)として単純化して示したものである(実際はもっと入り組んでいる)。

図2 WMBの7つの連合パートナーとRE100/EP100/EV100の位置づけ(1断面)

図2 WMBの7つの連合パートナーとRE100/EP100/EV100の位置づけ(1断面)

出所 https://www.wemeanbusinesscoalition.org/partners/
https://www.unic.or.jp/files/sdg_poster_ja.pdfをもとに編集部で作成

〔2〕日本のJCLPの活躍

 図2の右下に示すJCLP(Japan-CLP。日本気候リーダーズ・パートナーシップ)は、日本の脱炭素化に向けて最も中心的に活躍してきた団体の1つであり、世界と日本を結ぶゲートウェイ的な役割を果たしている。

 さらにJCLPは、GPN(グリーン購入ネットワーク)、ICLEI(持続可能性を目指す自治体協議会)、IGES(地球環境戦略研究機関)と共同で、「再エネ100宣言RE Action」を立ち上げ(2019年10月、表2参照)、消費電力量が10GWh以上の大企業を中心とした「RE100」に参加できない、中小規模(中小企業や行政・教育機関、病院等、消費電力量10GWh未満)の組織にも、脱炭素化を目指す協議会を設け、そのすそ野を広げている。

 表2に、本記事中の主な用語について整理したので参考にしていただきたい。


▼ 注1
誓約(コミットメント)の例:例えば、科学的な知見に基づく排出削減目標を採用することを誓約した社数、あるいは自社利用の電力を再エネ100%でまかなうことを誓約した社数、エネルギー生産性向上に取り組むことを誓約した社数などのコミットメントの合計。

▼ 注2
WMBレポートとして、例えば「米国電力産業の気候戦略評価:2019年更新版」(2019年8月15日発行)などを発行している。

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