CEMSの機能①コミュニティ設置型の蓄電システムの制御
北九州の実証では、不安定な太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーを大量に導入しているため、安定した電力に変えて提供できるよう、コミュニティ設置型の蓄電システム(図6)が導入されている。
図6 コミュニティ設置型の蓄電システムの構成
〔出所 富士電機、「スマートグリッドの動向と展望」、2012年11月20日〕
図6に示すように、蓄電システムは、
- 最上部の基幹系統
- その直下の自律運転系統〔燃料電池(FC)、太陽光発電(PV)、負荷〕
- 基幹系統(6600V)と自律運転系統を連携させるスマートPCS注7
- 次世代鉛蓄電池・リチウムイオン電池
で構成されている。
図6は、
- 上部の基幹系統の6600V系統
- 自立運転系統
が、スマートPCS(Power Conditioning System)内の直流を交流に変換するPCSに直接接続される。
そのPCSの下に
- 次世代鉛電池「ウルトラバッテリー」(古河電池製)
- リチウムイオン電池
- 古河電工製の充放電管理をする蓄電池管理システム
が接続された構成となっている。
このシステムを、CEMSと連携してコントロールするための富士電機製のコントローラが、スマートPCS内に設置されている。
図6に示すスマートPCS(PCSとコントローラで構成)の場合は、400〜600V程度の電圧で動作していることが多い。すなわち、蓄電池から、例えばPCSから400〜600Vの電圧で切り出して6600Vに昇圧し、基幹系統に系統に連結させているのである。
この蓄電池は、CEMSからも直接に制御できるようになっている。
CEMSの機能②再生可能エネルギーとPVの出力調整
一方、北九州コミュニティの実証試験では、太陽光発電(PV)など再生可能エネルギーが多数導入され、その規模(出力)が大きくなっていくと予想されている。そのため、今後、逆潮流注8などの新たな課題が出てくる。この逆潮流に、CEMS(富士電機製)がどのように対応するかが重要になってくる。
そこで、図7を見ながら、この課題への対応を解説しよう。
図7 再生可能エネルギー導入とPV発電の出力調整
〔出所 富士電機、「スマートグリッドの動向と展望」、2012年11月20日〕
図7は、右側に太陽光パネルが3基あり、6600Vの配電線にその電力を流している(逆潮流している)ところである。太陽光パネルが発電した電力(出力)が設置箇所(例:スマートハウス)の消費電力を上回り、変電所に向かって逆潮流が発生した場合、配電系統の基幹電圧が上昇してしまうなどの影響が出てくる。これによって配電電圧が、電気事業法第26条で規定されている適正値(101±6V:95〜107V)を逸脱しそうな場合、他の需要家の電圧を適正に維持するため、太陽光発電施設の設置者が逆潮流の電力量を自動的に抑制(出力抑制)する必要がある。
このような場合、CEMS(センター)のほうでそのような状況を予測して、先の図6に示したコミュニティ設置型の蓄電システムに対して、無効電力注9を出して電圧を適正にしなさいという「指令」を出して調整するのである。
(後編につづく)
▼ 注7
PCS:Power Conditioning System、パワーコンディショナーシステム。太陽光発電パネルや燃料電池等が発電した直流電力(DC)を、系統電力の交流電力(AC)に変換するインバータ(DC-AC変換)機能等を備えた装置。
▼ 注8
逆潮流:基幹電力系統から家庭などに電力供給される電力の流れ(潮流)に対し、家庭などの太陽光発電などで発電された電力が基幹電力系統に流れること。
▼ 注9
無効電力:通常電力は、目に見えないが有効電力と無効電力で構成されている。このうち、無効電力は、通常の有効電力と異なり電気料金には無関係な電力で、電圧を上げたり下げたりする機能をもった電力である。無効電力を多くすると逆潮流で下がってしまう基幹系統の電圧を上げることができ、少なくすると電圧を下げることができる機能をもっている。