ITU-TのPLC規格:G.hn/G.nbplcの最新動向
表4は、ITU-Tの高速PLC 規格を含むG.hnと低速PLC規格「G.nbplc」の標準化を大局的に整理したものである。ここで大きく変わったのは、これまでG.hnemというプロジェクト名であったものが、新しく再編されてG.nbplcというプロジェクト名に変更(後述)となったことである。
表4 ITU-TのG.hn/G.nbplc(スマートグリッド向け規格)の標準化
表4に示す高速PLC規格を含む「G.hn」は、表5に示すように、3つの基本勧告(標準)、
【1】G.9960:物理層仕様
【2】G.9961:データリンク層(DLL)仕様
【3】G.9972:他のPLCとの共存仕様
のうち、G.9961 Amendment 1として、隣接する複数ネットワーク間における相互干渉の緩和を目的とした機能追加が盛り込まれたほか、G.hnシリーズ勧告に共通する管理パラメータ/プロトコルを規定するものであり、デバイス設定、状態/性能管理、障害監視・診断機能に関する規定として、G.9962が2013年2月会合でコンセント(勧告草案合意)されている。管理規定を盛り込んだG.9962の完成により、実運用に向けた環境が整ったと考えられる。
表5 G.hnに関するITU-Tの基本標準勧告(【1】~【3】)と関連勧告
表6 G.hnが使用する10個の周波数帯域の配置(バンドプラン)
なお、高速PLC規格を含むG.hnでは、表6に示すように、
〔1〕電力線向け周波数帯域:3個
〔2〕電話線向け周波数帯域:2個
〔3〕同軸線向け周波数帯域:5個
など、10個の周波数帯域の配置(バンドプラン)が策定されており、伝送メディアごとにすみ分けて使用されることになる。
また国内における高速PLCに関しては、屋内の使用だけが許可されている現状に対して、2011年3月から検討が進められてきた屋外規制緩和に向けて、総務省における「高速電力線搬送通信設備作業班」の検討結果を踏まえ、「広帯域電力線搬送通信設備の屋外利用に係る省令等改正」に関する意見募集が行われているところである〔2013年(平成25年)3月11日まで〕。
なお、後編で説明するIEEE 1901とともにITU-T G.9960およびG.9972は、NIST SGIPにおけるCatalog of Standards(CoS)への登録が承認されていることを付け加えておきたい。(後編につづく)
▼ 注1
2011年6月30日にコンソーシアム会員内公開され、その後、2011年12月21日に一般公開された。また、2012年5月5日に最新版のバージョン1.01が一般公開されている。
▼ 注2
IEC TC 57:POWER SYSTEMS management and associated information exchange、「電力システム管理および関連する情報交換
に関する技術委員会。
WG 21:Interfaces and protocol profiles relevant to systems connected to the electrical grid、「送電網に接続されたシステムに関連するインタフェースおよびプロトコルプロファイル」の策定を担当するワーキンググループ。
▼ 注3
機器オブジェクト:ECHONET/ECHONET Liteが対象とする機器のこと。これまで、家庭で使用される機器(オブジェクト)は、電気を使う機器(エネルギーを使う機器)すなわち「省エネ機器」が主であったのに対し、スマートハウスでは、電気を発電する太陽光発電や燃料電池、あるいは電気を貯める蓄電池などの、「創エネ機器」「畜エネ機器」が導入・設置されるため、これらを含めた機器オブジェクトが追加された。
http://www.echonet.gr.jp/spec/pdf_spec_app_b/SpecAppendixB.pdf
▼ 注4
JAIST:北陸先端科学技術大学院大学
NICT:National Institute of Information and Communications Technology、独立行政法人情報通信研究機構
▼ 注5
TTC(ホームネットワーク)⇒http://www.ttc.or.jp/cgi/document-db/
▼ 注6
6LowPAN:IPv6 over Low power WPAN(Wireless Personal Area Network)、低消費電力型の近距離無線通信環境で動作するIPv6技術。
アダプテーション層:適合層。通常のインターネットでは、1500バイトやそれ以上のパケットサイズで通信している。しかし、例えばZigBeeネットワーク環境(非力な省電力環境)では、基本的に127バイトと小さなパケットサイズでしか通信できない。そのため、1500 バイトのIPv6 パケットをそのまま送受信することは不可能ある。これを解決するためIPv6技術を拡張し、IPv6パケットを127バイト単位に小さく分割するなど工夫し、パケットを効率的に送受信するプロトコルとして、IETFが策定したのが、アダプテーション層としての6LoWPANというプロトコルである。