IEEEにおけるIEEE 1901/IEEE P1901.2の標準化
IEEEにおける高速PLC規格「IEEE 1901」(正式名:1901-2010)では、基本的に
【1】HomePlug方式(HomePlug Powerlineアライアンスが策定)
【2】HD-PLC方式(HD-PLCアライアンスが策定)
の2方式の規格を制定していることに変更はない。
大きな変化は、表1に示すように、2010年3月から標準化開始された低速PLC規格である「IEEE P1901.2」の動きである。このIEEE P1901.2では、独自のP1901.2規格のほか、後述する欧州で普及している「3G-PLC」や「PRIME」などの低速PLC規格を取り込んで新しい標準が策定されており、2013年中には標準化が完了する予定と思われる。
表1 IEEEのIEEE 1901/IEEE P1901.2の標準化
「G.hnem」「G3-PLC」「PRIM-PLC」の3つの体系に
ITU-Tにおいて、使用周波数帯域が広くブロードバンドサービス(高速サービス)向けに標準化されたものがG.hn注1(高速PLC)である。これに対してG.hnem注2(低速PLC)は、G.hnで採用された考え方や方式を基本としつつも、適用されるアプリケーションを含めていくつか異なる点がある。それを整理すると、次のようになる。
(1)G.hnは、異なる複数の媒体(電力線/同軸ケーブル/電話線など)を統合したトランシーバ(送受信機)規格であるのに対し、G.hnemは「電力線」を伝送メディアとするトランシーバ規格であること。
(2)使用周波数は、日本ではG.hnの使用周波数(2~30MHz)よりも低い帯域を使用(10~450kHz)することがARIB STD-T84注3によって決められている。
(3)スマートグリッド向けのアプリケーション(AMIやホームネットワークにおける電力管理など)をターゲットとしていること。
2011年12月の標準成立時には、G.hnemというプロジェクト名の下に、
【1】G.9955勧告(物理層)
【2】G.9956勧告(DLL:Data Link Layer、データリンク層)
があり、その下に、図1の(1)のような体系となっていた。すなわち、このG.hnem体系の中にG.hnem方式に該当する本文があり、その他にいくつかのAnnex(付帯規格)として、Annex A:G3-PLCやAnnex B:PRIMEなどが混在していたため、非常に複雑な構成となっており理解しにくい面があった。これをSG15/Q.15(課題15)で、プロジェクト名をG.nbplc注4として図1の右の(2)に示す、
【1】G.9902:G.hnem(物理層/DLL)
【2】G.9903:G3-PLC(物理層/DLL)
【3】G.9904:PRIME(物理層/DLL)
のように、G.990xシリーズとして見直し、整理されたのである。
図1 G.nbplc標準体系の見直し:(1)から(2)へ
〔出所 近藤芳展、NTTアドバンステクノロジ資料〕
▼ 注1
G.hn:G.home network
▼ 注2
G.hnem:G.home network energy management
▼ 注3
ARIB STD-T84:
http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/1-STD-T84v1_0.pdf
▼ 注4
G.nbplc:G.narrow band power line communication、狭帯域(低速)PLC規格。