[急浮上する高速/低速PLC標準規格の 最新動向]

急浮上する高速/低速PLC標準規格の 最新動向 ─後編─

─ITU-Tの低速PLC(G.nbplc)が大幅な見直しへ─
2013/05/01
(水)

前編では、HEMS /スマートメーター間の標準インタフェースとして推奨されたECHONET Lite の「伝送メディア」について、TTCが制定した実装ガイドライン「TR-1043」と、920MHz 帯無線に関するTTC標準「JJ-300.10」を中心に解説し、ITU-T の高速PLC 規格を含む「G.hn」と低速PLC 規格「G.nbplc」の標準化最新動向についても概観した。後編では、ITU-T 内で大きく変化した低速PLC 規格「G.nbplc」の標準化に焦点を当てて解説し、既存のPLC 技術と「IEEE P1901.2とITU-T G.990x シリーズ」の関係についても比較しながら見ていく。

IEEEにおけるIEEE 1901/IEEE P1901.2の標準化

IEEEにおける高速PLC規格「IEEE 1901」(正式名:1901-2010)では、基本的に

【1】HomePlug方式(HomePlug Powerlineアライアンスが策定)

【2】HD-PLC方式(HD-PLCアライアンスが策定)

の2方式の規格を制定していることに変更はない。

大きな変化は、表1に示すように、2010年3月から標準化開始された低速PLC規格である「IEEE P1901.2」の動きである。このIEEE P1901.2では、独自のP1901.2規格のほか、後述する欧州で普及している「3G-PLC」や「PRIME」などの低速PLC規格を取り込んで新しい標準が策定されており、2013年中には標準化が完了する予定と思われる。

表1 IEEEのIEEE 1901/IEEE P1901.2の標準化

表1  IEEEのIEEE 1901/IEEE P1901.2の標準化

「G.hnem」「G3-PLC」「PRIM-PLC」の3つの体系に

ITU-Tにおいて、使用周波数帯域が広くブロードバンドサービス(高速サービス)向けに標準化されたものがG.hn注1(高速PLC)である。これに対してG.hnem注2(低速PLC)は、G.hnで採用された考え方や方式を基本としつつも、適用されるアプリケーションを含めていくつか異なる点がある。それを整理すると、次のようになる。

(1)G.hnは、異なる複数の媒体(電力線/同軸ケーブル/電話線など)を統合したトランシーバ(送受信機)規格であるのに対し、G.hnemは「電力線」を伝送メディアとするトランシーバ規格であること。

(2)使用周波数は、日本ではG.hnの使用周波数(2~30MHz)よりも低い帯域を使用(10~450kHz)することがARIB STD-T84注3によって決められている。

(3)スマートグリッド向けのアプリケーション(AMIやホームネットワークにおける電力管理など)をターゲットとしていること。

2011年12月の標準成立時には、G.hnemというプロジェクト名の下に、

【1】G.9955勧告(物理層)

【2】G.9956勧告(DLL:Data Link Layer、データリンク層)

があり、その下に、図1の(1)のような体系となっていた。すなわち、このG.hnem体系の中にG.hnem方式に該当する本文があり、その他にいくつかのAnnex(付帯規格)として、Annex A:G3-PLCやAnnex B:PRIMEなどが混在していたため、非常に複雑な構成となっており理解しにくい面があった。これをSG15/Q.15(課題15)で、プロジェクト名をG.nbplc注4として図1の右の(2)に示す、

【1】G.9902:G.hnem(物理層/DLL)

【2】G.9903:G3-PLC(物理層/DLL)

【3】G.9904:PRIME(物理層/DLL)

のように、G.990xシリーズとして見直し、整理されたのである。

図1 G.nbplc標準体系の見直し:(1)から(2)へ

図1  G.nbplc標準体系の見直し:(1)から(2)へ

〔出所 近藤芳展、NTTアドバンステクノロジ資料〕


▼ 注1
G.hn:G.home network

▼ 注2
G.hnem:G.home network energy management

▼ 注3
ARIB STD-T84:
http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/1-STD-T84v1_0.pdf

▼ 注4
G.nbplc:G.narrow band power line communication、狭帯域(低速)PLC規格。

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