東京電力のスマートグリッドへの取り組み
東京電力が進める、世界最大規模の電子メーターをデマンドレスポンス(DR)を目的に採用するスマートグリッドシステムの構築が開始された。
すでに本誌でも紹介注1したように、2013年5月1日に、
- スマートメーター用通信システム(AMI、委託先:東芝)
- スマートメーター運用管理システム(委託先:NTTデータ)
が決まり、2014年下期からそのシステム構築がスタートすることが想定されている。このため来たる2013年10月に、スマートメーターの競争入札が想定されており、2014年度上期30万台、2014年度下期160万台、2015年度300万台、2018年度までに1400万台以上の導入が計画されている。(東京電力 2013年度事業運営方針より)
廃案となった電気事業法改正案の電力システム改革
〔1〕広域系統運用機関の設立
一方、去る6月26日に閉会した第183通常国会において、参議院で安倍晋三首相に対する問責決議が可決された。このため、参議院で同日中に審議、採決する予定であった電力システムの改革を進める「電気事業法改正案」などが、各野党の賛成多数で廃案となった。
この廃案となった改正案では、強い権限をもたせた「全国規模での電力需給調整を行う広域系統運用機関注2を、2015年をめどに設立する」ことが盛り込まれていた(図1)。
図1 送配電部門の「広域性」の確保:「広域系統運用機関」の創設(広域運用・中立性確保に必要な業務)
〔出所 http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/denryoku_system_kaikaku/pdf/008_03_00.pdf〕
この広域系統運用機関は、平常時や緊急時を問わず、電力の安定供給体制を抜本的に強化するとともに、電力コストの低減を図るため、従来の各電力会社の区域(エリア)の概念を越えた全国規模で電力需給の調整機能を強化する機関である。
〔2〕「電力小売りの全面自由化」と「発送電分離」
また、電力システム改革は、「2016年」をめどに家庭が電力会社を自由に選べるようにする「電力小売りの全面自由化」を、さらに、電力会社の発電部門と送配電部門を分離し電力事業への新規参入しやすくする「発送電分離」(図2)を、「2018〜2020年」をめどに実施する計画であった。
このようにして、日本における電力の自由化、発送電分離の課題は先送りとなり、2013秋の臨時国会へ持ち越しとなった。
図2 送配電網の中立化
〔出所 電力システム改革専門委員会報告書2013年2月 http://www.enecho.meti.go.jp/denkihp/kaikaku/20130515-1-1.pdf〕
なお、発送電分離の課題については、発電・小売分野での多様化・自由化を行うためには、さまざまな事業者が送配電網を利用できるよう、送配電網の中立的な運営が必要となる。
そこで、図3に示すように、
- 送配電部門の会計の分離(現状)
- 送配電部門の別会社化(送配電部門全体を別会社化)
- 系統運用機能の分離(送配電設備を電力会社に残したまま、送電線の運用・指令機能だけを別組織に分離する)
などの検討が行われている。
図3 送配電部門の中立化のための「発送電分離」の類型
〔出所 電力システム改革専門委員会報告書2013年2月 http://www.enecho.meti.go.jp/denkihp/kaikaku/20130515-1-1.pdf〕
▼ 注1
2013年6月号(2013年5月30日発売)掲載記事『世界最大規模の東電・スマートグリッドシステムを「東芝」と「NTTデータ」が構築へ!』を参照。
▼ 注2
広域系統運用機関:電気事業法改正案では、強い情報収集権限・調整権限に基づいて広域的な系統計画の策定や需給調整を行う、「広域系統運用機関」(仮称)を設立すると提言されていた。この広域系統運用機関の設立によって、これまでの送配電網を「地域の需要に応じた供給力を確保する」仕組みから、「より広域的に供給力を有効活用する」仕組みに変えようとする提言であった。