OpenADR 2.0対応製品を見てみる
本原稿を作成している2013年4月時点では、Bプロファイル仕様書は最終案が公開された段階で、製品化されているのはAプロファイルに対応したもののみであった。
表2に、OpenADRアライアンスの認証を受けたプロファイルA対応製品を示す。
表2 OpenADR 2.0対応製品一覧(Aプロファイル)
国際標準化機関IECで検討作業中のOpenADR 2.0
OpenADRアライアンスでは、OpenADR 2.0を国際標準とするため、国際電気標準会議(IEC)に積極的に働きかけてきた。その結果、IECの技術委員会TC57注6の作業グループWG14、16、17、21などがDR関連のメッセージ交換に関連するCIM(Common Information Model)との整合化作業を行うことを検討しており、プロジェクト委員会PC118注7では、3月の総会でOpenADR 2.0Bプロファイルを公開仕様書(Publicly Available Specification:PAS)とすることを決議している。
現時点ではOpenADR以外に実装可能なレベルまでまとまったDRの標準は存在しないので、IECが定める正規の国際標準ではないが、国際標準となる過程の中間仕様書として一応認められたことになる。
欧州の気になるDR関連動向
欧州は、DRに関して米国ほど逼迫した促進要因がなく、自動DR(ADR)に関しては地域実証レベルにとどまっていたが、いくつか動きがある。
その1つとして、欧州電気事業者連盟(EURELECTRIC)と欧州17カ国31の配電会社が加盟するEDSO(European Distribu-tion System Operators)が、IEC 61850やCIMなどの標準に関して政策方針書(ポジションペーパー)「DSO PRIORITIES FOR SMART GRID STANDARDISATION」を2013年1月末にまとめている。その中で、IECのデータモデリングをDR、DER(Distributed Energy Resource)およびVPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)まで拡張することが謳われている。
また、ドイツでは2009年、スマートグリッド関連の国家プロジェクトE-Energyを立ち上げ、ドイツ国内6地域で、それぞれユニークな研究・開発・実証試験が行われてきた。そのうちの1つの「eTelligenceリサーチプロジェクト」を牽引していたフラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所(Fraunhofer Institute ISE)は、その成果の1つとしてJavaによるIEC 61850のサブセットの実装を行い、LGPLライセンスのライブラリとして公開。現在は、openIEC 61850として、同研究所のスマートグリッド部門に設けられたプロジェクト「OpenMUC(Monitor & Control)」でサポートされている。現時点ではDRにフォーカスされていないものの、実装可能なオープン規格として、今後OpenADRと競合するようになる可能性がなくはないので、ウォッチしていくことが必要である。
Profile
新谷 隆之(しんたに たかゆき)
インターテックリサーチ株式会社
1974年3月、大阪大学工学部産業機械工学科卒業。1974年4月、日本ユニバック(現日本ユニシス)入社。基本ソフト/ミドルソフトの開発・保守を経て、電力業務関連システムの調査・評価を担当。2009年5月、スマートグリッド関連のリサーチを行うインターテックリサーチ株式会社を起業し、現在に至る。
OpenADRアライアンス会員。
▼ 注6
TC57では、Power Mana-gement and Associated Information Exchange(グリッド内の電力制御やグリッドと需要家間のインタフェース規定)を検討している。
▼ 注7
PC118では、Smart Grid User Interface(グリッドとユーザー間のインタフェース規定やデマンドレスポンス関連規定)を検討している。