[プロダクト]

OpenADRをベースにしたAutoGrid社の「DROMS」とデマンドレスポンス・ビジネス戦略

2013/07/01
(月)
SmartGridニューズレター編集部

オクラホマ電力会社とPG&Eの例

〔1〕オクラホマガス・電力会社OG+E(Oklahoma Gas & Electricity)

米国の電力会社の例を挙げてみよう。

AMI(Advanced Metering Infra-structure、スマートメーター通信基盤)のソリューションプロバイダとしてはリーダー的な存在として知られているシルバースプリングス(Silver Spring Networks)のAMIを導入しているオクラホマガス・電力会社(OG+E)では、すでに90万台のスマートメーターが設置されており、15分間隔でデータが読み取られている。

さらに今後、DRプログラムに対応したサーモスタット(自動温度調節器)が4万5000台から15万台程度設置される予定となっている。これらのデータを統合することは、膨大なデータ量になり、現在Facebookやtwitterなどの管理システムによって処理されているほどのデータ量に相当する。

AutoGridは、すでに、このようなビッグデータに対応する機能を既存のクラウド環境で実現しており、とくにビッグデータの処理に求められている短時間でのスケーラビリティ(拡張性)も実現している。現在のクラウド時代においては、豊富なクラウド技術が実現され、既に利用されていることから、AutoGrid社においても、これらの技術を活用し対応している。

例えば、A社がXY社のデータセンター(クラウドではない)を利用する場合、契約時に「1000個のサーバを利用する」という固定的な契約となるとしよう。このとき、例えば、急速にデータ量が増大し、緊急に100個のサーバを追加する必要が生じた場合、まずその時点からソフトウェアなどのインストールが開始されることになる。このためインストールに時間がかかること、また、サーバ間のデータ転送に時間がかかったりする。

これに対してクラウドの場合は、スケーラビィティを最初から想定した構成になっているため、同社のソフトウェア「DROMS」を全世界展開する場合にも、インターネットを利用してどの国からでもクラウドの恩恵を受けることができる。ユーザーが独自にもつデータセンターに比べると、クラウドではコストが倍くらい安くなるといわれている。

DROMSのプラットフォームの構成

次に、このような背景から開発された、AutoGridの最新のソフトウェア製品「DROMS」を紹介しよう。

図2に示すように「DROMS」は、ビッグデータを想定したアーキテクチャを備えたソフトウェアプラットフォームで、3層構成となっており、具体的には次に述べるような機能と特徴を備えている。

図2 3層構成のエネルギーデータプラットフォーム(EDP)

図2  3層構成のエネルギーデータプラットフォーム(EDP)

〔出所 AutoGridプレゼンテーション資料より、2013年5月14日〕

〔1〕EDP(エネルギーデータプラットフォーム)レイヤの機能と特徴

このDROMSの最下位に位置する、第1層のEDP(エネルギーデータプラットフォーム)は、電力消費量などのビッグデータをリアルタイムに予測解析できる機能などを備えている。また、従来の方法に比べて100〜1000倍程度のスケーラブルを実現でき、コストも削減できる。このEDP上には、

(1)SQLのような技術を用いなくともペタバイトのデータ処理が可能

(2)大規模並列計算環境が実現できる

(3)データの予測解析のためにデータのリアルタイムストリーム処理が可能

などの機能を構築できる。

〔2〕エンジンレイヤの機能と特徴

次に、第2層のエンジンレイヤであるが、エンジンレイヤの中にはいくつかの機能があり、そのうちの例えば予測機能(Forecas-ting)は、下位のサーバ群から収集したビッグデータを、AutoGridが開発したアルゴリズム(演算処理)を使用して、電力需要を予測する機能である。

この機能が予測するスマートメーターの電力需要予測は、例えば100万戸の家庭にスマートメーターが設置されている場合、100万個のスマートメーター全体の予測ができると同時に、各戸1台ごとのスマートメーターの需要予測まで可能となっている。

これによって、全般的な翌日の電力需要予測とともに、スマートメーター1台ごとの詳細な電力需要の予測も可能となっている。

〔3〕アプリケーションレイヤの機能と特徴

第1層のEDPレイヤで処理し、例えば次の第2層のエンジンレイヤで電力需要を予測(Forecasting)して得られたデータを、DRなどにうまく対応できるようにするのが、第3層のアプリケーションレイヤのソフトウェア群である。

例えばDRの場合、「電力会社の電力供給が不足しそうである」というイベント(事象)が発生した場合、DR契約をしている家庭(顧客)に対して、電力会社から「冷房機器の温度を2℃上げるなどして電力を節電してください」というお願いが発せられる。また、EV(電気自動車)を充電している家庭の場合(図2のEV管理)は、通常フル充電しているところを節電のために50%の充電にする、あるいは充電を停止するなどの管理が行われる。これらのアプリケーションは、通常、物理的にはクラウドのサーバ内に格納されている。

現在のDROMSは、前出の図2のアプリケーション群のうち「デマンドレスポンス」「各種料金体系への対応」「EV(電気自動車)管理」が完成し提供されている。

なお、図2に示すアプリケーションレイヤの、

  • 「再生可能エネルギーの統合」
  • 「無効電力の最適化」注3
  • 「仮想サイト/仮想フィールドへの訪問」注4
  • 「顧客のセグメント化(細分化)」注5

などは、今後開発予定のアプリケーションである。これらの開発は、すでに開発されている第2層のエンジンレイヤ上で容易に開発できるようになっている。


▼ 注3
電力システム(系統)の電圧を上げたり下げたりして、電力品質を保ち最適化すること。無効電力とは、負荷(エアコンなどの機器)と電源とで往復するだけで消費されない電力のこと。

▼ 注4
検針のための訪問が仮想(バーチャル)になる、つまり遠隔監視ができること。

▼ 注5
ユーザーのグルーピングを設定できる機能。例えば料金の契約内容ごと、あるいはエネルギー使用パターンごとなど、さまざまな条件でユーザーのグルーピングをしてDRイベントの通知や管理ができる。

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