デマンドレスポンスソリューションの例
次に、一般的なデマンドレスポンス(DR)ソリューションの例を示す。図3の上部は、米国PG&Eにおける2006年の状況であるが、
- ピークロードは7月25日午後5時に発生。
- 年間を通して電力使用量が最大容量を超えたのは計51時間であった。これは年間総給電時間の0.6%(20,883MWs)に相当。
- 7月25日午後5時に超えた電力量は最大容量の10%(2200MW)である。
- 追加電力に要する発電費用は、2000ドル強/kWと予想される。
これらの状況分析から、PG&Eでは1年間に51時間しかない最大ピークロード(ピーク負荷)に対処するために、約4000億円もの電力設備(発電設備)を投資する必要があった。
図3 デマンドレスポンスソリューションの例
〔出所 AutoGridプレゼンテーション資料より、2013年5月14日〕
このような電力設備への不経済な投資を回避するため、デマンドレスポンスを導入して解決していくためのシミュレーションが、図3の下部である。図3の下部は、NERC注6における分析である。
図3の下部のグラフ曲線をたどってみよう。最上位の「黒色の曲線」である“DRなし”(電力使用量年平均1.7%増加)の状態に比べて、順次下方に向かっていき、最下位の「オレンジの曲線」の“全員がDRユーザーに参加する”ことになると、最大で20%のピークデマンドが改善される(20%が省電力化される)ことになるのがわかる。
このことは、20%の仮想発電所(VPP:Virtual Power Plant、バーチャル発電所)を建設したことと同様なことであり、電力会社はDRの導入によって、何千億円もの新しい発電関連の設備投資をしなくて済むことになる。この場合、より効果を上げるためには、既存の発電設備のDRだけでなく、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーも含めたトータルな連携によるDRが必要である。
AutoGridが提供するデマンドレスポンス製品(機能)
このような背景から、AutoGridは、デマンドレスポンスソフトウェア製品の提供を開始した。米国や欧州では既にOpenADRなどの標準化が進み先行しているが、日本でも2013年5月に、OpenADRをベースとする「デマンドレスポンス・インタフェース仕様書1.0版(案)」が策定されたところから、今後、この分野のビジネスは大きく期待されている。
また、AutoGridはOpenADR「1.0/2.0」、ZigBee「SEP 1.x/2.0」注7などを中心にカスタムプロトコル(独自プロトコル)などを包含したDROMSを、インターネット、AMI、セル(住宅など)、既存ビジネス、独自プロトコルなど幅広いビジネス分野で展開していくことになる。
以上、AutoGridのOpenADRやSEP 2.0に対応した「DROMS」を中心に解説してきたが、すでに、米国カリフォルニア州のCPAU(City of Palo Alto Utilities、パロアルト市ユーテリティ)注8、OG+E(Oklahoma Gas & Electricity、オクラホマガス・電力会社)、オースティンエナジー(テキサス州オースティン)、南カリフォルニアエジソン、EPRI(Electric Power Research Institute、米国電力研究所)などに導入されている。
▼ 注6
NERC:North American Electric Reliability Corporation、北米電力信頼度協議会。大規模発電システムのための物理的セキュリティおよびサイバーセキュリティに関する規格などを策定する非営利組織。
▼ 注7
SEP:Smart Energy Profile、電力事業者が需要家側(例:家庭)の電力の使用状況などの監視や制御を行うために策定された機能仕様。具体的には、電力消費量の測定・表示や、デマンドレスポンス(電力需給の制御)と負荷制御(家電機器等の制御)、電力料金の測定・表示、テキストメッセージの表示(緊急連絡メッセージなど)のプロファイル(機能仕様)などがある。SEP 2.0は、IP対応のオープンなプロファイルとなっている。
▼ 注8
電気、ガス、水道、下水の他最近では光ファイバサービスまでをも市として運営。