電気事業法と電気設備技術基準などの構成
〔1〕電気設備技術基準とは
電気設備技術基準は、「電気事業法注1」の中にいくつかの省令・政令が定められているが、そのうちの1つの省令として定めてられているものである。ビルや工場などの電気設備の技術基準を定める省令ということから、通称「電気設備技術基準」あるいは「電技」(でんぎ)というように省令の略語で呼ばれることもある。「電気設備技術基準」は法令の1つであるため、ここに記述されていることは、「ねばならない」という性質をもっている内容のものである。
「電気設備技術基準」(電技)では、電気工作物に対していろいろな規定が定められている。電気工作物とは、電気事業法(第2条第1項第16号)で定められている、『発電、変電、送電若しくは配電又は電気の使用のために設置する機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路その他の工作物(船舶、車両又は航空機に設置されるものその他の政令で定めるものを除く。)』をいう。
〔2〕電気事業法における電気工作物の分類
電気に関するシステムや設備あるいはその全体を含めて電気事業法では、「電気工作物」と呼ばれている。
この電気工作物とは、表1に示すように、
- (1)一般用電気工作物(電気需要側)
- (2)事業用電気工作物
- ①電気事業の用に供する電気工作物(電気供給側)
- ②自家用電気工作物(電気需要側)
というように分類されている。
ここで、一般用電気工作物とは、例えば、低圧で受電するような一般の住宅などで、これは電気事業法(第2条第1項第16号)で定められていることである。
表1 電気事業法(第2条第1項第16号)における電気工作物
〔3〕日本の電技省令第2条の電圧の区分
また、電気設備技術基準では電圧についてその第2条において、表2に示すように、低圧、高圧および特別高圧に区分しているが、電気工作物の使用電圧によって詳細にその施設方法を規定している。
表2 日本の電技省令第2条の電圧の区分
〔出所 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09F03801000052.html〕
なお、IECでは、表3のようにIECにおける電圧区分と定義をしているが、現在、IECのSMB/SG4注2では、直流に関して400Vを最優先課題として標準化が推進されている(本誌2013年11月号参照)。
表3 IECにおける電圧区分
〔出所 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09F03801000052.html〕
これらの他に、電気設備技術基準に何を定めるかということは、電気事業法で決められている。具体的には、
- 電気設備からの感電・火災を防止するということ。⇒すべての電気工作物に必要な規則
- 電気設備の電磁気的影響(EMC)による障害を防止するということ。⇒すべての電気工作物に必要な規則
- 供給支障の防止1:〔例えば、Aビルで電気的事故(短絡事故)が発生した場合、Aビルで適切な保護器が設置されていないと、短絡電流の影響がAビルから電源側に影響を及ぼし、上位の保護器が動作してしまうことがある。この場合、事故に関係していない隣のBビルにも波及し、AビルもBビルも停電してしまうような波及事例〕⇒事業用電気工作物に必要な規則
- 供給支障の防止2:電力会社側の事故によって、他の電気事業用の電気工作物の供給に支障のないようにする規則。⇒電力会社(電気事業の用に供する電気工作物)だけに必要な規則
の4つのポイントがある。
この電気設備技術基準(省令)に定める内容は、これら4点の内容について定めることと電気事業法第32条の第2項に規定されている。
▼ 注1
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S39/S39HO170.html
▼ 注2
SMB/SG4:Standardiza-tion Management Boad、標準管理評議会の下にあるStrategic Group 4(戦略グループ4)のこと。