[特集]

直流給電時代の電気設備技術基準などの法制度

― 交流主体から直流を考慮した法制度への課題は何か ―
2013/12/01
(日)
SmartGridニューズレター編集部

電気設備技術基準と解釈に分離

この電気事業法に基づく電気設備技術基準は、平成9(1997)年に大改正が行われ、それまで300条程度であったものが、第1条から78条までとなり、ボリュームとしては非常に少なくなった。そこに、前述の4つのポイントが定められている。

このように、電気設備技術基準のボリュームが少なくなったのは、定性的な規定内容とされたからである。

同省令の「定性的な規定内容」を満足するための、具体的な基準は電気設備技術基準の「解釈」として定められている。

以前は、細部にわたる具体的な内容まで省令で規定されており、「解釈」というものはなかった。その後、著しい技術の発展の都度省令を変えるのは、省庁間の調整などの手続きが大変だったため、省令は基本的にはあまり変えなくてもよいような内容にした。例えば、電気設備技術基準(省令)の4条には「電気設備は感電・火災その他に影響を及ぼさないように施設しなければならない」とあるが、この内容1つを見ても、将来もあまり変える必要のない普遍的な条文になっている。

このようにして、表4に示すように、以前は300条ぐらいあった省令は「解釈」が分離され、現在78条とコンパクトになっている。

表4 電気設備技術基準の構成

表4 電気設備技術基準の構成

〔出所 経済産業省:「電気設備に関する技術基準を定める省令」平成9年(1997)年3月27日、通商産業省省令第52号〕

したがって、電気設備技術基準(省令)を読んでも、工事担当者にとってはどうすれば安全な工事ができるか理解できない。そこで、「解釈」の部分にこの省令を満足するためにどのような方法で行ったらいいのか、具体的な詳しい解説がされている。すなわち、「解釈」というのは、この省令を満足させるため(具体化するため)の1つの方法論を提示したものとなっているのである。

直流と交流の大きな違い

次に、直流と交流の基本的な違いを見ておこう。

図1(1)に示すように直流(DC:Direct Current)とは、時間によって大きさは変化しても、常に一定の方向となる電気のことを指す。直流の身近な例としては電池が挙げられ、図1(1)に示すように時間が変化しても一定の電流(電圧)となる。

図1 直流(DC)と交流(AC)の違い

図1 直流(DC)と交流(AC)の違い

交流(AC:Altanating Current)とは、図1(2)に示すように、家庭用電気や音声信号のように、電圧(電流)が時間とともに変化するものである。

技術的な性質として交流と直流の大きな違いは、前述したように、直流は図1(1)に示すように電流の流れる方向が常に一定方向をとなる電気のことを指す。これに対して交流は、図1(2)に示すような周期的な波形となっており、必ずゼロの電流(電圧)になることがあるが、直流の場合はゼロ点はない。これは、直流を遮断することが、交流の場合よりも困難になることを示している。

一般に交流回路では、前述したように、電流ゼロ点が周期的に存在することから、電流の遮断が容易である(ゼロ点で遮断できるため)。しかし、直流回路ではゼロ点が存在しないことから、遮断器(ブレーカー)の接点間に発生するアークが継続しやすくなり、結果的に遮断が困難となる。この遮断への対応が大きな課題の1つであった。

しかし現在では、直流遮断に関する技術開発が進み、太陽光発電などの普及に伴って、直流用のブレーカーのラインナップも増えてきており、直流遮断に対する課題はほぼ解決されていると言える。

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