交流の漏電遮断器と直流の場合の対策
次に、交流の漏電遮断器の例を挙げて見てみよう、例えば図2に示すように、電源側の変圧器(トランス)と負荷(例:電気冷蔵庫)の間に漏電遮断器(ELCB:Earth Leakage Circuit Breaker)を設置した場合を考えてみる。
漏電遮断器とは、屋内配線やそれに接続された家電機器などが漏電したときに、それを感知し、感電や火災などを防ぐため速やかに電気回路を遮断する装置のことである。
交流の環境で、家庭やビルなどの電気設備に設置されている漏電遮断器には、地絡電流を検出するための零相変流器(ZCT:Zero-phase Current Transformer、一種のコイル)が組み込まれている。
今、負荷である電気冷蔵庫が地絡事故を起こしたとすると、図2に示すように負荷(電気冷蔵)から地面(アース)に向かって、交流の地絡電流Igが流れる。このため、ZCT(零相変流器)には、Ig(=Il-Ie)による電圧が誘導される。
図2 漏電遮断器(ELCB)の仕組み
この電圧によって漏電遮断器の引外し装置(スイッチ)を引外し、電気を遮断する。
しかし、直流における地絡の場合、地絡電流も直流であることから、交流の場合のような電磁誘導を利用した漏電遮断器は適用できない。そのため、その他の方法による地絡保護方法を開発する必要がある。
現状では、直流漏電遮断器の規格は制定されていないため、直流対応の製品が存在せず、直流給電の普及に向けた1つの課題となっている。
直流による電食とその対策
〔1〕直流による電食現象
次に、直流による電食現象を見てみよう。電食とは、地下に埋設された金属(ガス管や水道管、あるいは各種ケーブルなど)が電気化学作用(金属がイオン化して溶出する作用)によって、腐食する現象のことをいう。
例えば、表面を磨いた鉄板を地中に埋めて経過をみた場合、鉄板は全体的にさびる。この場合は鉄板表面での微小な異金属と土壌との接触による化学的な腐食とバクテリアによる自然腐食である。
次に、同様に地中に埋めた、隣り合わせた2つの鉄板(鉄板2と鉄板3)に直流電圧をかけてみる。するとこのうちの1枚(鉄板2)は自然腐食した鉄板よりも激しく腐食する。これは外部に接続された直流電源によってイオン化した鉄板2の鉄が、隣の鉄板3に向かって土中に溶出するからである。このとき、鉄板3は鉄板2からのイオンでメッキされている状態となり、腐食しなくなる。このようなメカニズムを利用したものが電気防食である。〔出所 http://www.jeea.or.jp/course/contents/09101/〕
〔2〕直流を使用する電車による電食
具体的な電食の原因となる大きな例として、直流給電の電気鉄道のレールからの漏れ電流によるものがある。
鉄道のレールはある程度の接地抵抗(大地と接地された導体の間の抵抗)をもっているが、完全に絶縁されてはいないので一部の電流が漏れ、地中を流れてしまう。
一般に電車の動力源である電気(直流給電)は、電車に電気を供給するために架線から電気を取り入れ、使用された電気はレールを帰路として、変電所に戻ることが基本になっている。ところがレールの絶縁が不十分な場合は、電流の一部が地中に漏れてしまう。
また、直流の電車では電車線側を(+)極に、レール側を(-)極にしているが、これも電食対策のひとつになっている。これを反対にすると、電車線、レール、埋設金属体それぞれの電流の向きが逆になり、電車の走行によって軌道の近辺すべてが電食地帯になってしまう。
このようなことから電気設備技術基準では、電気鉄道の直流帰線や電気防食施設について、他の工作物に電食作用による障害を及ぼすおそれがないよう施設することが、第54条、第78条で定められている。
これを受けて電技の解釈では第236条、第254〜258条で詳細な施工方法が定められている。〔出所 http://www.jeea.or.jp/course/contents/09101/〕