ユニケージ開発手法の特徴とその優位性
最初に、前編で解説した「ユニケージ開発手法」の特徴とその優位性について、開発保守性やコスト面、機能面などからまとめると、次のようになる。
(1)開発保守性からの特徴
- DB(データベース)を使わずフラットファイル(テキストデータ)で実装するシンプルなシステム構造であること。
- UNIXが標準でもつシェルやOSコマンド、拡張コマンドを組み合わせるだけであること。
- UNIX(OS)のバージョンアップによる影響を受けにくいこと。
- コマンドの知識習得のみで、JavaやCOBOLなど開発言語の知識は不要であること。
- 入力データを加工しながら徐々に機能を追加していくアジャイル指向の開発が可能であること。
(2)コスト面からの特徴
- Hadoop注1などビッグデータ分散処理のための大規模な仕組みは不要であること。
- WebAPサーバやDB製品、開発支援ツールも不要であり手軽に利用が可能であること。
(3)機能面からの特徴
①ファイルの編集、集計、加工などに便利で高速な拡張コマンドが提供されること。
⇒ DWH注2など分析系業務のバッチ処理など、他プロジェクトでの活用が期待できる。
以上のことから、ユニケージ開発手法は、従来のようなコード量産型のシステム開発ではなく、Hadoop等の方式も使用しなくても並列処理コンピューティングを実現できる。特にバッチ処理における高速化に資する開発手法といえる。
『スマートメーターシステム』への適用事例
それでは、次に「ユニケージ開発手法」の「スマートメーターシステム」への適用事例を見ていくことにしよう。
現在、開発プロジェクトでは、CIS(Custo-mer Information System、営業料金システム)におけるメインフレームを業務システムサーバにダウンサイジングし、メインフレームから脱却していくという検討や、家庭などのスマートメーターから収集される電力使用量などのビッグデータに大規模バッチ処理の実装を適用していくことなどが、今後、推進していくうえでの課題となっている。
図1は、前編に掲載した図の再掲であるが、この図の右側に示したMDMSとCIS(メインフレーム/業務システムサーバ)をつなぐ部分が、今回の開発プロジェクトが取り組んでいる対象箇所である。
図1 スマートメーターシステムの全体像と今回の解説の対象箇所
今回、とくに注意を払って見ている点は、ユニケージ開発手法が開発しようとしているシステムが要求する処理性能、信頼性に見合うものであるかどうかを検証することであった。ユニケージ開発手法で提供されるコマンド群はほとんどのUNIX環境で動作する安定した技術であり、性能面でもJavaで開発された処理よりも飛躍的な処理速度の向上が認められたため、開発プロジェクトで、ユニケージ開発手法の採用が決定されたのである。
そのほか、MDMSと既存システム(CIS)の間では、さまざまな情報がやり取りされている。例えば、
- 計器ID(スマートメーター)と設置場所情報(計器の運用管理面から設置場所を連携する)
- イベントデータ(例えばスマートメーターのカバーが開いたというような、計器などの「変化が起きた場合」のデータ)
- 電力使用量30分値のスマートメーターからのデータ
- SM(スマートメーター)操作依頼データ(遠隔からのスマートメーターの開閉操作、すなわち、電力供給の停止・開始など)
- 異動に関するデータ(田中さんが転居して鈴木さんに変わった、あるいは契約容量が変わったなどのデータ)
などの情報である。
▼ 注1
Hadoop(ハドゥープ):オープンソースソフトウェアとして公開されているASF(Apache Software Foundation)によって開発された、大規模データを効率的に分散処理・管理するためのソフトウェア基盤(ミドルウェア)でクラウドなどにも使用されている。誰でも自由に入手・利用できる。
▼ 注2
DWH:Data WareHouse、データウェアハウス。大量のビッグデータ(業務データ)の中から、各項目間の関連性を分析しビジネスに活用するシステム。