アンシラリーサービスを自動車に例えると
アンシラリーサービスを、自動車を一定送度で運転するためのサービスとして、時速と周波数のアナロジーで考えてみよう。
自動車で時速60kmで走行する場合を、周波数60Hzの電力を供給している状況と考えると、次のような状況になる。
〔1〕走行速度の微調整:周波数制御のアナロジー
自動車がのぼり坂に差し掛かる(負荷が多くなる)と、速度が遅く(周波数が下がる)なる。そこで、時速60kmの速度を保つには、アクセルを踏みこむ必要がある。
逆に下り坂に差し掛かる(負荷が軽くなる)と、速度が速く(周波数が上がる)なるので、アクセルの踏み込みを浅くする必要がある。
周波数制御は、定速走行のため自動車のアクセルペダルの踏み込み加減を調整するようなものである。
〔2〕急こう配の坂道に差しかかったら:予備力適用のアナロジー
次に、突然急な上り坂に自動車が差しかかった場合を考えよう。
アクセルペダルを最後まで踏み込んでもどんどん自動車のスピードが遅くなるので、アクセルペダルの調節だけではどうにもならない。そこで、より力強い走行パワーを得るためにドライブモードをDレンジからセカンドにシフトする。セカンドにシフトしてもまだ時速60kmまで走行速度を回復できなければ、さらにLのポジションにシフトする必要がある。このシフトチェンジは、供給力不足に際して予備力を適用するようなものである。
次に、瞬動予備力(spinning reserve)と運転予備力(non-spinning reserve)の違いに関して、同じく自動車を発進させる状況でのアナロジーで考えてみよう。
〔3〕エンジンをふかしながらの待機
家人と買い物に出かけるので、先に駐車場に行き、エンジンをスタートして待っている状況は、エンジンが回転している(spinning)ということで、瞬動予備力のアナロジーになる。
〔4〕もう一段階前の状態
「買い物に行きたいので車を出して」と家人に頼まれた状況を考えると、その時点では、自動車のエンジンはまだ止まって(Non-spinning)おり、これからエンジンを回転させるので、いわゆる運転予備力のアナロジーになる。
このように、車でのアナロジーを行うことで、瞬動予備力では、運転予備力よりガソリン(発電燃料)の無駄遣いと、排気ガス(CO2排出量)増加の問題があることを実感していただけるのではないかと思う。
また、瞬動予備力をデマンドレスポンス資源に置き換えられれば、燃料代もかからず、無駄なCO2発生も抑えられる。そこに、デマンドレスポンスをアンシラリーサービスに適用する意義がある。
Profile
新谷 隆之(しんたに たかゆき)
インターテックリサーチ株式会社 代表取締役
1974年3月、大阪大学工学部産業機械工学科卒業。1974年4月、日本ユニバック(現日本ユニシス)入社。基本ソフト/ミドルソフトの開発・保守を経て、電力業務関連システムの調査・評価を担当。2009年5月、スマートグリッド関連のリサーチを行うインターテックリサーチ株式会社を起業し、現在に至る。2014年2月25日、KlNX協会が設立した日本KNX協会の事務局として就任。