[スペシャルインタビュー]

開発スピードを10倍に向上させたM2M/IoTの新サービスモデルとビジネス展開

―「ThingWorx」のノンプログラミング開発プラットフォーム ―
2014/04/01
(火)

M2M/IoTのために設計されたThingWorxプラットフォーム

─編集部:ThingWorxプラットフォームとはどのようなものですか?

Westrom:シスコシステムズ注1やGE、エリクソンなど他の多くの企業が、2020年頃には世界中でインターネットに接続されているデバイス(センサーや機器類)の数はおよそ500億個になると予測しています。

現在ではまだどのようにデバイスをつなぐか、あるいはどのようにしたらつなぎやすいかということばかりに注目がされていますが、私たちはこの膨大な数のデバイスを生かせるかどうか、つまり価値を見い出すのはすべてアプリケーション次第だと考えていています。この点に注目して作られたのが私たちの製品、ThingWorxプラットフォームの強みだと思っています。

─編集部:従来の開発環境はどのようなものなのでしょう?

Westrom:ThingWorxが登場する以前は、デバイスを活用するにはカスタムアプリケーション(自社独自のアプリケーション)を開発するのが一般的でした。その場合、デバイス専用のSDK(ソフトウェア開発キット)やAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)などのツールはあっても、特定の業務に特化したソフトウェアを作るため、コストが上がり、メンテナンスやバージョンアップも難しかったのです。

また、テレマティクスのように成熟した市場では、完成度の高いパッケージアプリケーションがたくさん稼働しています。パッケージソフトを使えば、定型業務を滞りなく進めて効率化し、生産性を高めることが可能ですが、顧客企業にとっては、自社のビジネスプロセスをソフトウェアに合わせて変更する必要が少なからず出てきたりするのです。

つまり残念なことに、こうしたカスタムアプリケーションやパッケージソフトはイノベーションには不向きで、他社との差別化のために変更を加えたり新しいものを作ったりしたい、と考えても難しいのです(図1)。

図1 従来のM2M/IoTの開発環境図1 従来のM2M/IoTの開発環境
〔出所 ThingWorx〕

─編集部:ThingWorxプラットフォームを使った開発環境の特徴は?

Westrom:ThingWorxプラットフォームは、M2M/IoTに注目し、より革新的な新しい価値を生み出すアプリケーションをより迅速に開発するために誕生しました。

ThingWorxプラットフォームの高い生産性を支える特徴の1つが「モデリング」です。これは、人、モノ、デバイス、機械、および企業内のバックエンドシステム、そしてそれらを取り巻くモノなど、すべての(互いに異質な)モノを結び付けてアプリケーションを形作っていく手法なのです(図2)。

図2 ThingWorxのプラットフォームを使ったM2M/IoTの開発環境図2 ThingWorxのプラットフォームを使ったM2M/IoTの開発環境
〔出所 ThingWorx〕

ThingWorxが創業した2009年頃は、Web2.0が登場し、新しい開発スタイルが生まれました。

M2Mのシステムでは、単にデバイスからのデータ(主として時系列データ)を集めるだけでなく、それをバックエンドのトランザクションデータ、OracleやSAP、Salesforceなどのような他のデータと統合することで、より価値のあるものにすることができるようになりました。また、近年重要視されている人のデータや非構造化データなどは、主にソーシャルネットワークなどから取り込むことができるのです。

もう1つの重要なデータソースとしてWebサービスが挙げられます。これまで、それぞれのデータソースは、例えば牧場の干し草を入れておく「サイロ」に貯蔵されているようなもので、データはシステムごとに閉じて使われていたのです。塔のように孤立している各サイロを互いにつなぐことによって、さらに価値を生み出すことができると考えたのです。ThingWorxはこのようにさまざまなデータを統合して分析し、活用するという点に主眼を置いて作られています。

このとき問題となるのは、永続的に稼働するシステムをどのように実現するかということです。長期にわたって使うシステムには、メンテナンスや変更が重要になります。

そのようなシステムを開発する側の立場になって考えると、カスタムでコードを手書きするということになると、非常に大変なことです。生産性も落ちるし、やりたいこともできなくなってしまう。そこを助けるために、非常に簡単にできる(コードを手書きしなくてもよいように)ThingWorxは作られているのです。

ThingWorxを使って開発していただくキーワードとして、以下のことが挙げられます。

  1. 非常に速い
  2. 継続的にできる(システムを動かしながら改良していける)
  3. イノベーション(今までになかった新しいビジネスを生み出すことができる)

▼ 注1
シスコシステムズは、2014年2月の最新の「モバイルデータ予測」において、2013年から2018年の5年間に、モバイルユーザー数は41億人から49億人に増加する見通しで、さらにモバイル対応デバイスとM2M接続の総数は、この5年間に70億台から100億台(パーソナルモバイルデバイスが80億台、M2M接続が20億台)に増加する見通しであると発表した。
また世界のモバイルデバイスのタイプ別増加予測では、M2Mデバイスは5%から20%へと5倍の増加、さらに日本のM2Mの増加予測においては、12%から42%へと3.5倍も増加すると発表している。

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