[特集]

仙台マイクログリッドが示す電力自由化時代のエコシステム

─ サイバーセキュリティに対応したインフラ構築は喫緊の課題 ─
2014/06/01
(日)
SmartGridニューズレター編集部

2.エコシステムとしてのマイクログリッドの可能性

江崎:仙台マイクログリッドを視察して、もうひとつ面白かったのは、マイクログリッド自体が、ひとつのエコシステムになっているところです。少子高齢化が進む社会の中で、大学が、病院と介護老人保健施設と一緒にコミュニティを構成している。今後、日本でどのようにしたらエネルギーを自営できるコミュニティをデザインできるとお考えですか。

今泉:マイクログリッドには、「電気」があり、「ガス」があり、また、多くの場合、非常用発電用に「油」があります。この3つのエネルギー源は最低限ミックスし、加えて発電の環境を支える冷却水としての「水」を含めたシステムを考える必要があると思います。また、震災などが起こったとき、単独のインフラというのは、必ず何か問題が起きますので、複数のインフラを構築しておき、それぞれに何か障害があったときに補完しあうシステムも重要です。  従来、電力業界はベストミックスという言葉を使っていました。今後は、需要家側でもエネルギーのベストミックス、つまり、太陽光発電などの再生可能エネルギーによる地産地消やガスの利用、蓄電池の利用などを、自己防衛のために構築する、それを実現させなくてはならないということが震災の経験からわかりました。

江崎:データセンターなどもエコシステムに入ってくるのでしょうか。

今泉:当然入ってくると思います。さらに、ゴミ処理場などには、大量に熱を発生させて、無駄にしている熱源があります。普段はあまり好まれない施設だと言われることが多いのですが、エネルギーの視点から見ると、それは宝の山ではないでしょうか。 例えば、ゴミ処理場の横にデータセンターがあって、ゴミ処理場で発生したエネルギーをデータセンターの空調に使うなどということも考えられます。異なった価値や目的のものが、エネルギーという視点で一緒に共存できる可能性があると思います。

江崎:今後、NTTファシリティーズでは、このようなエコシステムをもったコンプレックス(複合システム)の構築を仕掛けていくのでしょうか。

今泉:こういったことは社会的要請だと思います。すでに、自治体で発電して電気を売ることなどは行われていますが、もう一歩進んで、コミュニティの中核になることまで踏み込んでいける可能性があると思います。

江崎:今までの都市の作り方とは毛色が違うものになっていくということでしょうか。

今泉:なっていきたいと思っていますし、なっていくべきだと思います。

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