[新動向]

シュナイダーエレクトリックが日本でマイクログリッド事業に参入!

― EcoStruxure Microgridソリューションを提供開始 ―
2019/05/01
(水)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

「Life is On」(注1)のビジョンを掲げ、世界100カ国以上でグローバルな事業展開を推進するシュナイダーエレクトリックは、2019年4月8日、日本市場で、マイクログリッド向け事業に参入することを発表した(注2)。その後、4月15日には、同社の3層構成のIoTプラットフォーム「EcoStruxure」のフレームワークを利用し、すでに全世界で130件の導入実績をもつマイクログリッドソリューション「EcoStruxure Microgrid」の提供を開始した。
ここでは、同社のマイクログリッド戦略を見ながらEcoStruxureとEcoStruxure Microgridを解説した後、提供される3つの「EcoStruxure Microgrid」ソリューションを解説する。さらに、最新の代表的なマイクログリッドの導入例などを紹介する。

シュナイダーのマイクログリッド戦略

表1 シュナイダーエレクトリックのプロフィール(敬称略)

表1 シュナイダーエレクトリックのプロフィール(敬称略)

出所 https://www.proface.com/ja/company/info/profileをもとに編集部で作成

〔1〕マイクログリッド向け事業への参入とその背景

 シュナイダーエレクトリック(以下、シュナイダー)は、世界100カ国以上で、住宅をはじめ、ビルやデータセンター、インフラストラクチャ、その他さまざまな産業におけるエネルギー管理や自動化などのデジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)事業を展開するグローバル企業である(表1)。

 同社は、日本でマイクログリッド注3向け事業に参入し、同社のマイクログリッド向けソリューション「EcoStruxure Microgrid」(エコストラクチャ・マイクログリッド)の提供を、2019年4月15日から開始した。

 EcoStruxure Microgridは、同社のIoTプラットフォームである「EcoStruxure」(後述)を利用して、すでに欧米を中心に世界で130件の導入実績がある。

 シュナイダーの日本統括代表・代表取締役社長の白幡 晶彦氏は、「これから20年後の世界のエネルギー需要は1.5倍になると予測されていますが、一方でCO2の排出量は1/2にしなくてはならないという社会的な使命があります。このジレンマを解決するには、3倍(1.5×2)のエネルギーの効率化を実現する必要があります」と述べた。続けて、「このようなエネルギーの効率化は、IoTやAI、クラウドを用いて、再エネによる発電の分散化と制御によって実現できる時代を迎えています」と、低炭素化に向けてアピールした。

 このようなコンセプトのもと、シュナイダーはすでにグローバルで、2018年は260億ユーロ(約3兆2,800億円)の売上を達成している。その内訳はエネルギー管理(エネルギー効率化)分野が200億ユーロ、産業オートメーション(プロセス効率化)分野が60億ユーロとなっている(図1)。

図1 シュナイダーエレクトリックの国際市場での売上げ比(2018年売上より)

図1 シュナイダーエレクトリックの国際市場での売上げ比(2018年売上より)

出所 シュナイダーエレクトリック「パワーシステム事業に関する記者発表会」、2019年4月8日

〔2〕RE100、EP100にも加盟

 また、シュナイダーは、世界のエネルギー課題である地球温暖化の解決に向けたパリ協定の実現のため、事業運営に必要となる電力を100%再エネで調達する取り組みを展開している。2017年12月には、Climate Group(英国に拠点をもつ非営利組織)が主導する次の2つの国際的なイニシアティブにも加盟している。

  1. RE100注4:2030年までに事業運営に要する電力を再エネ100%にする。中間目標として、2020年までに80%にする。
  2. EP100注5:2030年までにエネルギーの効率を2005年の基準値との対比で倍増させる。

〔3〕なぜ日本市場に参入したのか

 シュナイダーが、今回日本でマイクログリッド向け事業に参入した背景には、

  1. 再エネの導入が増大し、分散化対応が必要となってきていること
  2. ESG注6企業やRE100を目指す企業が増えてきていること
  3. 地震や台風など、自然災害に対する電力システムのレジリエンス(耐性と回復力)の強化が求められていること

などの要因が挙げられている(図2)。

図2 なぜ今日本で参入するのか

図2 なぜ今日本で参入するのか

出所 シュナイダーエレクトリック「パワーシステム事業に関する記者発表会」、2019年4月8日

 「日本市場におけるこの3つの要因は、欧米でマイクログリッドが導入されてきた背景と同じ傾向となっています。また、この分野の日本市場は、年平均成長率36.9%と予測され(Frost & SULLIVAN調査)、まさに今、日本市場に参入するタイミングであると感じています」(シュナイダーエレクトリック・バイスプレジデント 青柳 亮子氏)。


▼ 注1
Life is On(ライフ・イズ・オン):電気がオンのとき生活がオンになる、という意味。「電気・電力は基本的人権の1つ」であるという考えに基づいて、電気があることは文化的な生活を送ることができるだけでなく、例えばスマホ1つを充電するだけで多彩な情報にアクセスできるなど、人間とって重要なインフラになっていることを意味する。

▼ 注2
2019年4月14日のシュナイダーエレクトリックの記者発表会。登壇者は、同社 日本統括代表 白幡 晶彦(しらはた あきひこ)氏、同パワーシステム事業部 バイスプレジデント青柳 亮子(あおやぎ りょうこ)氏。

▼ 注3
マイクログリッド:太陽光発電や風力発電、EV、燃料電池などの分散電源と蓄電池などの電力貯蔵システムで構成された、小規模な電力システム(小規模系統網)。離島などでも利用され、既存の電力網と連携することも、切り離して自立運転することも可能。

▼ 注4
RE100:Renewable Energy 100、再エネ100%推進イニシアティブ。事業運営を100%再エネで調達することを宣言した企業が加盟する国際組織。2014年9月に設立。

▼ 注5
EP100:Energy Productivity 100、エネルギー効率向上(省エネ)イニシアティブ。事業のエネルギー効率を倍増(100%)させることを宣言した企業が参加する国際組織。2016年4月に設立。

▼ 注6
ESG:Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス:企業統治)の頭文字を取ったもの。国際的に、企業の成長には、ESGが示す3つの観点が重視されるようになってきており、企業を評価し投資する基準ともなっている。

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