KNXの心臓部:共通のツールとしての「ETS」
〔1〕ETSで相互接続を担保
また、KNXシステムを構築するためにKNX協会で開発された共通のツール(ソフト)「ETS」(Engineering Tool Software)が、KNXの普及の大きな要因の1つになっている。このETSは、各KNX対応機器を導入・設置する場合に、KNXプロジェクトのシステムおよび機器の設定をするソフト、すなわちKNX導入ソフトとも言われるものである。
一般に、市場でオープンプロトコルと言われているものであっても、各メーカーの機器をインテグレーションする場合には、結局、各メーカーが出している専用のソフトを使用してインテグレーションするケースが多い。例えば、照明制御分野の国際標準規格「DALI」注2の場合、DALIのマスターを作っているメーカーがそのセッティング(設定)用のソフトを作っているため、異なるメーカーの機器を相互接続する場合、相互接続を担保しにくくなっている。
これに対してKNXの場合は、どこのメーカーのKNX対応製品を使用してシステムをインテグレーションする場合でも、必ずETSを使用することになっている。このETSは、KNX協会が中立的で公平な立場で作成し提供しているため、接続性が担保されている。例えば、ABBの製品に、他のA社、B社、C社のメーカーの製品を接続する場合、ETSを用いてセッティングすれば、各メーカーの製品がシームレスに連動して動作できるようになる。
〔2〕KNXのアーキテクチャ
図4に、KNXのアーキテクチャを示す。1例として、TP1と呼ばれるツィストペアケーブルを使用した際の構成は次の通りである。
図4 KNXのアーキテクチャ:合計約65,000デバイスに対応
出所 一般社団法人 日本KNX協会「KNXについて」より
(1)バックボーンライン(Area0、という扱い)には、15のエリア(Area1〜Area15)にある各Main lineをBC(バックボーン・カプラ)で接続する。同時にPS/Ch(電源/チョーク)で通信ラインに電力を供給する(エリアの総数はArea0〜Area15の16エリア)。
(2)各エリアの各Main line(Line0、という扱い)には、AreaごとにLine1〜Line15と15ラインが接続可能となっている(Lineの総数はLine0〜Line15の16ライン)。
(3)Line1〜Line15の各Lineには、DVC1〜DVC64(最大255まで拡張可能)と最大255台のDVC(デバイス:機器)が接続可能となっている。
(4)各Line(Line1〜Line15)にも、PS/Ch(電源/チョーク)で通信ラインに電力が供給されている。
(5)以上の構成によって、1つのKNXシステムでは、最大で約65,000デバイス(255デバイス×16ライン×16エリア=65,280)が接続可能となっている。
〔3〕KNXシステムの構築例
図5に、タッチパネルコントローラに、照明スイッチやブラインドスイッチを接続したKNXシステムの構築例を示す。また、図5は、上側にセンサー類を下側にアクチュエータ類を配置し、データ用のBUSラインと電源供給ラインの構成も示している。
図5 KNXによるシステムの構築例
出所 一般社団法人 日本KNX協会「KNX適用事例」より
表3に、KNXの10の特長をまとめて示す。
表3 KNXの10の特長
出所 一般社団法人 日本KNX協会「KNXについて」をもとに編集部作成
▼ 注1
ECHONET Lite:経済産業省によってHEMSの標準インタフェースとして推奨されたプロトコル。エアコンや照明機器などの家電機器の制御や消費電力量の把握などをネットワーク経由で可能にする国際標準の通信規格。ECHONETLite通信ミドルウェアはISO/IEC 14543-4-3 標準に(2015/9)、機器オブジェクト/電文フォーマットは、IEC62394 Ed2.0(Release B、2013/9)標準となっている。
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/shoujo/smart_house/pdf/008_s05_00.pdf
▼ 注2
DALI:Digital Addressable Lighting Interface、照明制御の分野における国際標準の通信規格(IEC 60929)