KNXは国際標準として広く普及
国際的なリーダー企業であるABBが、なぜKNXを導入したのか、またKNXとは何かを解説しながら、その背景を見てみよう。
〔1〕KNXとは
KNXとは、KNX協会(KNX Association、本部:ベルギー・ブリュッセル)によって策定された、住宅やビルにおいてホームオートメーションやビルオートメーションを実現するためのプロトコル(通信手順)、およびそれに関連するソフトウェア技術(ETS:Engineering Tool Software)である。具体的には、新築・既築を問わず住宅やビルにおいて、家電機器やシャッター、照明設備、空調機器などの制御から、水やエネルギーの管理に至るまで利用可能なプロトコルとなっている。
欧州で開発されたKNXは、しばしば日本のECHONET Lite注1と比較されるが、KNXがビルオートメーションの視点からホームオートメーション(家庭)へアプローチしている標準プロトコルであるのに対して、ECHONET LiteはHEMSなど家庭用を中心に標準化されたプロトコルである点が大きな違いである。
表2に示すように、KNXはすでにISO/IECにおける国際標準となっているほか、中国や米国などでも国家標準として承認されている。
表2 ホーム・ビルオートメーションの世界標準となっているKNX
EN:European Norm(European Standards)、欧州規格
GB:国家標準の中国語読み〔Guo jia Biao zhun、グオジャ・ビオズンの頭文字〕:強制国家標準(日本のJISに相当)。GB/T:勧奨国家標準、GB/Z:国家標準化指導性技術書
出所 一般社団法人 日本KNX協会「KNXについて」をもとに編集部作成
KNX協会には、2016年5月末時点で世界38カ国から411社にのぼる企業がメンバーとして参加しており、年間40〜60社のペースで会員企業が増えている。また世界61カ国368カ所に認定トレーニングセンターを提供し、世界中で同じトレーニングを受講することが可能となっている。トレーニングを完了した技術者は、KNX認定技術者として登録され、すでに142カ国に約5万人が登録されている。
図3 異なるプロトコル(例:DALI)との共存を可能にするKNX(接続例)
出所 説明をもとに編集部作成
また多くの学術団体(33カ国123機関)と連携しているほか、BACnetなど7つの団体などと連携している。このため、住宅やビルのシステムをすべてKNXによって構築するのではなく、例えばすでにビルオートメーション用に導入されているBACnetなどのプロトコルとゲートウェイを介して共存できるなど、柔軟に活用できる規格になっている(図3)。さらに、メーカーが異なる場合のKNX対応機器のインターオペラビィティ(相互接続性)については、その認証をKNX協会が行っている。