[「日本卸電力取引所」の役割と課題]

240社を超えた新電力ベンチャー登場時代の「日本卸電力取引所」の役割と課題 ─第1回─

2014/07/01
(火)
SmartGridニューズレター編集部

日本卸電力取引所でどのようなことが行われているか

〔1〕需給を反映した価格指標の形成

次に、日本卸電力取引所でどのようなことが行われているのか、具体的に見てみよう。

同取引所は、売り手側と買い手側の会員によって電気の売買が行われており(図2)、各会員は表2に示す通りである(2014年5月29日現在、82社)。

また、同取引所の主な取引の形態は、以下の4つである。

(1) スポット市場
翌日に受渡する電気の取引を行う市場。1日を30分単位に区切った48商品について取引を行う。約定方式はブラインド・シングルプライスオークション注3を採用している。

(2) 時間前市場
スポット市場で翌日に受渡する電気の取引がなされた後、実際の受渡までの間に不測の発電不調や需要急増が起こる場合がある。時間前市場はそのような翌日計画策定後の不測の需給ミスマッチに対応するための市場である。現在、1日を3場に分けて取引を行っている。
 ①1場:13時〜17時
 ②2場:17時〜21時
 ③3場:21時〜翌13時
約定方式は、スポット市場と同じブラインド・シングルプライスオークションを採用している。

(3) 先渡市場
将来の特定期間を通じて受渡する電気の取引を行う市場。商品は月間24時間型、週間昼間型など、特定の期間と時間帯の組み合わせで構成されている。約定方式は、ザラ場を採用している。
①先渡定型取引:先渡定型取引では、約定後に売買当事者が顕名となり、受渡の手続・清算等は売買当事者間で行われる。売買当事者間で清算を行うため、相手先に対する与信の設定等を、取引開始前に準備する必要がある。
②先渡市場取引:先渡市場取引は、すべて匿名で実施される。約定後の相手先は取引所となり、受渡はスポット市場を通じて行われる。

(4) 分散型・グリーン売電市場
政府が2012(平成24)年5月に決定した2012(平成24)年度夏の電力需給対策の一環として開設された市場。売手は取引会員でなくとも、またスポット取引の最小取引単位(1MW)より小さな電気であっても取引が可能。


▼ 注3
ブラインド・シングルプライスオークション:入札価格によらず約定価格で取引される。例えば、10円/kWhで売りの入札を出していても、約定価格が15円/kWhであれば、15円/kWhで売られることになる。ブラインドとは、入札時に他の参加者の入札状況が見えないことを指す。

◆表2 出所
〔出所 http://www.jepx.org/

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