[特別レポート]

急浮上する電動車(EV・PHV)の調整力と3つの協調領域

― 再エネ・VPP時代に新ビジネスチャンスが到来 ―【JSCA主催「次世代自動車-インフラ設備インターフェースの国際標準化に関するワークショップ」】
2016/09/01
(木)
SmartGridニューズレター編集部

COP21パリ協定注1を踏まえた、地球温暖化対策をはじめとする環境・エネルギー面の課題解決に向けて、エネルギーを供給する発電側では、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギー(以下、再エネ)が急速に普及し、需要側では例えば運輸部門において次世代自動車(電動車注2)が急速に普及し始めている。
2016年7月26日、JSCA主催「次世代自動車-インフラ設備インターフェースの国際標準化に関するワークショップ」(以下、ワークショップ)が開催された。同ワークショップでは、再エネの増大とVPP時代を迎えて、系統電力の安定化に向けた電動車(EV・PHV)の「調整力」に着目し、そのリファレンス(参照)アーキテクチャを策定し、業界が協力して実現する「3つの協調領域」が明らかにされた。これにより、新ビジネス創出の可能性が拓けてきた。
本記事は、同ワークショップのうち、(株)三菱総合研究所 環境エネルギー本部スマートエネルギー戦略グループ 主席研究員 志村 雄一郎(しむら ゆういちろう)氏の講演を中心に解説する。

日本のVPP容量:2030年には大規模火力「37基分」へ

〔1〕VPP構築実証事業がスタート

 図1の左側に示すように、日本でも住宅用太陽光発電(住宅用PV)などの再エネによって発電される電力に加えて、エネファームやコジェネレーション(コジェネ)、HEMS・BEMS・FEMSなどにおける据置型蓄電池容量の増大、さらに今後、予測される大容量の蓄電機能を備えた電動車(EV・PHV)の普及・拡大などによって、需要家側におけるエネルギーリソースが急速に増大することが予測されている。

 このため、このような需要家側に散在するエネルギーリソースをIoTによってアグリゲーション(統合)して、あたかも1つの発電所であるかのように機能させるVPP(Virtual Power Plant、仮想発電所)への期待が高まり、例えば2016年7月から、すでに関西電力など14社の参加によって「バーチャルパワープラント(VPP)構築実証事業」注3がスタートしている。

〔2〕2030年には日本のVPP総電力容量は3,700万kWへ

 図1の左側に示された需要側の各エネルギーリソースを、経済産業省の長期エネルギー需給見通し注4などをもとに、2030年を見通して概略的に試算すると、図2のようになる。

 すなわち、2030年においてVPPを構成する需要家側のエネルギー・リソースは、

(1)創エネ設備:住宅用PV、エネファーム、コジェネなど⇒| 2,450万kW |(大規模火力約24基分)

(2)DR・畜エネ設備:HEMS・BEMS・FEMS、EV/PHVなど⇒| 1,320万kW |(大規模火力約13基分)が調整可能容量

(注:計1億3,200万kWのうち10%が調整可能容量として試算)

となる。このように2030年には、日本のVPPの総電力容量は| 3,770万kW |に達すると予測されている、これは実に大規模火力発電所約37基分となり、ここに新しいビジネスチャンスが創出されることが期待されている。

「ネガワット取引市場」の創設とERAB検討会のスタート

〔1〕「ネガワット取引市場」の創設

 このような背景のもとに、2015年11月に開催された、第3回「未来投資に向けた官民対話」注5では、今後、電力の節電(すなわちネガワット)のインセンティブを抜本的に高める方針が打ち出され、家庭の太陽光発電やIoTを活用して節電した電力量を売買できる「ネガワット取引市場」が、2017年までに創設されることになった。

 そのため、2016年度中に、事業者間の取引ルールを策定し、エネルギー機器を遠

隔制御するための通信規格OpenADRやECHONET Liteなどの整備に向けて、2016年1月29日に官主体のERAB検討会注6が発足した。

〔2〕従来の火力発電に代わってVPPが調整力へ

 ERAB検討会では、前出の図1左側に示すVPP(仮想発電所)を機能させて、従来火力発電所などが行っていた、電力系統の調整力(電力が不足したら発電量を増大させ、過剰になったら減少させること)としても活用することが検討されている。

 これが実現されると、従来の電力系統への負担(影響)を軽減した形での再エネの導入・拡大や電力供給の安定供給の確保、石油火力などの燃料費が高い既存の調整力(火力発電等)の代替えによる経済性の向上や排ガスの低減による環境保全によって、3E注7を達成することも可能となる。


▼ 注1
2015年11月30日〜12月12日、フランス・パリで開催されたCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)は、京都議定書以来の、米中および発展途上国を含む196の国と地域が全会一致で温室効果ガスの削減に取り組む、新たな国際的な枠組みである「パリ協定」を採択した。具体的には、産業革命前からの平均気温上昇を2℃未満に抑える(1.5℃にも言及)など。

▼ 注2
電動車とは、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)などのように、電気によってモーター(電動機)を回転させて走行する自動車のことを指している。EV、PHVが車載する蓄電池容量は増加する方向にあり、EVは十数〜90kWhの車両が販売されており、PHVはEV並みの蓄電池搭載量の車両も出てきている。

▼ 注3
経済産業省 資源エネルギー庁の補助事業で、実施期間は、2016年7月21日〜2017年2月28日、実施場所は関西エリアが中心となっている。
・関西電力プレスリリース「バーチャルパワープラント構築実証事業への参画について」、2016年7月28日(14社による共同のリリース)
・参加14社:関西電力、富士電機、三社電機製作所、GSユアサ、住友電気工業、日本ユニシス、NTTスマイルエナジー、エネゲート、エリーパワー、大林組、関西電気保安協会、ダイヘン、Nature Japan、三菱商事、
http://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2016/0728_3j.html
http://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2016/pdf/0728_3j_02.pdf

▼ 注4
経済産業省「長期エネルギー需給見通し」、平成27(2015)年7月、
http://www.meti.go.jp/press/2015/07/20150716004/20150716004_2.pdf

▼ 注5
http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/actions/201511/26kanmin_taiwa.html

▼ 注6
ERAB検討会:アグリゲーションビジネス(VPPビジネス)の発展に向けた官主体(経済産業省主催)の検討会(ERAB:Energy Resource Aggregation Business)。産学主体で設置されたERABF(ERABフォーラム)とも緊密に連携して、当該ビジネスの発展を支援していく。
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment.html#energy_resource

▼ 注7
3E:①Energy Security(エネルギーの安定供給)、②Economy(経済性)、③Environmental Conservation(環境保全)の3つからなる概念。

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