[「日本卸電力取引所」の役割と課題]

新電力ベンチャー登場時代の「日本卸電力 取引所」の役割と課題 ≪第3回:最終回≫

─自由化で先行する欧米の電力取引所の最新動向─
2014/09/01
(月)
SmartGridニューズレター編集部

4. 欧州におけるリアルタイム市場の状況

 図3は、欧州における系統運用者が運用するリアルタイム市場を示したもので、前回(第2回)で解説した日本の電力会社の中央給電指令所の機能の一部に相当する。

欧州では、各国の国内法に基づいて、送電系統運用事業者(TSO)注13に対して、系統の安定性維持の責務が課せられる一方、TSOが自前の発電設備などを保有するケースは少ないため、外部との契約関係によって、リソースを確保することが多い。
また、系統運用に必要なこのリソースは、「電力需給量」と「電力供給品質」の2種類に分けられる。
電力需給量を物理的に一致させるための機能は「バランシングサービス」(需給調整サービス)といわれ、これは、あらかじめ定義された時間単位(15~60分)において、系統の需給を電力量ベースで一致させるサービスである。
電力量の需給調整については、TSOが運用する短期的入札市場において調達し、その費用をインバランス料金注14として系統利用者から回収する制度設計としているところが多く、アンシラリーサービス(電力供給品質維持サービス)とは別立ての料金制度とされている。

◆図3 出所
〔出所 「卸電力取引所について」、日本卸電力取引所〕
 
▼注13
TSO:Transmission System Operators
 
▼注14
インバランス料金:例えば、ある事業者が発電所の故障によって、顧客への電力供給に不足を生じた場合、系統運用者が不足する電力を補給する。当該事業者がその対価として系統運用者に支払うペナルティ料金を「インバランス料金」と呼ぶ。
 
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