[「日本卸電力取引所」の役割と課題]

新電力ベンチャー登場時代の「日本卸電力 取引所」の役割と課題 ≪第3回:最終回≫

─自由化で先行する欧米の電力取引所の最新動向─
2014/09/01
(月)
SmartGridニューズレター編集部

3. 欧州における主要な卸電力取引所

 全般的に見ると、2010年における欧州の主要な電力取引所での取引量は、前年比4%増の4兆6,010億kWhであった。このうちスポット取引量は、過去最高の1兆1,000億kWhを記録した。特に取引所別のスポット取引では、EPEX Spotのドイツ・オーストリア地域が前年比52%増を記録している。これはドイツの再生可能エネルギー法で2010年から再生可能エネルギー電力の全量を取引所で取引することが義務化されたことによるものである。北欧のNord Poolにおいても、同地域での電力消費量の増大に伴って取引量が7%増加している。
図2に、欧州における主要な電力取引所の取引量を示す。図2の左に「1年間のスポット取引量」を、右側に「電力消費量に占めるスポット取引量の割合」を示す。
 
図2左のスポット取引量のうち、Nord Pool(北欧)を見ると、1年間で大体3,000億キロワットアワー〔300TWh(テラワットアワー)〕であり、これはほぼ東京電力管内の1年間の電力消費量に匹敵する。また、EPEX Spot(フランス・ドイツ・オーストリアなど)、GME(Gestore del Mercato Elettrico。イタリア)、OMEL(スペイン)の3つのスポット取引量は、2,000億kWhでほぼ横並びとなっている。
図2右に示す、電力消費量に占めるスポット取引量の割合を見ると、例えば、SEM(アイルランド)が99%、続いてNode Pool(北欧地域)は82%、EPEX Spot(ドイツ・オーストリア)が34%で、平均は40%である。図2には示していないが、日本は現在、1%強とかなり低い水準である。
 図2の右に示すように、フランス(EPEX Spot)では11%程度である。フランスはEDF(フランス電力)の1社独占であったが、全面自由化と発送電分離は完了している。フランスの状況に照らしても、日本のスポット市場が現状の1%程度から大きく増加する可能性は十分にあると考える。
 欧州の場合、各国が国際連系線でつながっているので、日本と事情が違うように見えるが、日本も9個の国が(北海道電力~九州電力の9社)が連系線でつながっていると見なせば、大きな違いはないともいえる。

◆図2 出所
〔出所 「卸電力取引所について」、日本卸電力取引所〕
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