[「日本卸電力取引所」の役割と課題]

新電力ベンチャー登場時代の「日本卸電力 取引所」の役割と課題 ≪第3回:最終回≫

─自由化で先行する欧米の電力取引所の最新動向─
2014/09/01
(月)
SmartGridニューズレター編集部

6. 電力の自由化に向けた卸電力取引所の課題と展開

 このような欧米での取り組みも視野に入れ、日本で現在進められている電力システム改革のなかで、JEPXの大きなテーマは、次の2つである。

(1)「1時間前市場」という新しいタイプの市場を構築・運用すること。
(2)今後、卸電力取引所という業種が、電気事業法の指定法人制度の対象となる(2016年目途)ので、JEPXも指定を受けることを念頭に、市場運営やガバナンスに関し、必要な体制を整えていくことが求められていること。
卸電力の価格指標を発信する機能は、JEPXにしかない機能である。信頼性のある価格指標を得るためには、ある程度の取引の厚み(取引量の増大)が必要である。
JEPXは、発足以後、堅実な市場運営を重ねてきた。小売の全面自由化を含む電力システム改革が進むなか、同所には引き続き、日本の卸電力市場の発展に寄与していくことが期待されている。
(終わり)
 
卸電力取引所(JEPX)の手数料
 JEPXの収入のうち最も重要なものは、電力の「売り手」と「買い手」から受け取る取引手数料である。主力商品であるスポット取引の手数料は、売買それぞれ1kWh当たり3銭(0.03円)である。取引の単位は、最小1,000kW(ただし30分単位)である。1,000kWの電力を1単位(30分)につき取引した場合の手数料は1,000kW×0.5時間×0.03円×2(売買双方あるので2倍)=30円となる。
 例えば、1年に100億キロワットアワーの前日スポットの取引があると、6億円〔=100億kWh×0.03円×2(売り手と買い手)〕の収入になる計算だが、2014年度から定額制(取引量にかかわらず1カ月当たり100万円という定額制度が選択できる)を導入したので、実際の手数料収入は6億円を下回る見込みである。
 収入には、上記以外に年会費等があり、これらによって、ITシステムの減価償却費やその他の経費をまかなっている。現状ではJEPXの取引量は、日本の消費電力全体の1%強にとどまっているが、今後、取扱量が増加して行けば、手数料の引き下げも可能になる。
 現在(2014年7月)のスポット電力の価格水準は1kWh当たり15~20円程度(24時間平均)であり、0.03円の手数料は卸電力の本体価格に影響を与えるほどではないが、北欧などの取引所では、取引所を経由する取引量が多い分だけ、日本よりも相当に低廉な手数料を実現している。
◎取材協力
岸本 尚毅(きしもと なおき) 氏
一般社団法人日本卸電力取引所 総務部長
 

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