[特別レポート]

IoT社会を支える次世代データセンターの実証事業がスタート

― 世界初の新技術開発で省電力・省スペース・軽量化を実現し、夢の「PUE=1.0」を目指す! ―
2017/01/06
(金)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

国際的なデータセンターのトレンド

〔1〕先行するマイクロソフト、グーグル、フェイスブック

 図2は、国際的なデータセンター設備の電力(エネルギー)の使用効率のトレンドを示したものである。横軸に年次(トレンド)を、縦軸にPUE(電力使用効率)注7を示す。

図2 データセンターにおけるPUEの国際的なトレンド

図2 データセンターにおけるPUEの国際的なトレンド

出所 環境省・平成28年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業「データセンタの抜本的低炭素化」、2016年11月7日

 図2の上部ほどPUEの値が大きくなる(すなわちICT機器が使用する電力の割合が低くなる=電力効率が低くなる)。データセンターの全消費電力の半分をICT機器が使うようになるとPUE=2.0という数値になる。

 10年前の2006年、米国の環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)が警告を発した時点で、米国のPUEは1.3〜2.0で平均1.6と言われた時期であった。その後、大型データセンターに限って見ると、年次が経過するほど、図2の黄色い矢印で示されているように、右肩下がりの傾向が見えてきた。2011年頃になると、100万台規模のサーバを使用するマイクロソフト(PUE=1.08)やFacebook(PUE=1.06)、グーグル(PUE=1.12)などの先進的な超大型データセンターは、PUE=1.1を切るほどに効率を向上させてきた。しかし、図2を見ると、他の多くのデータセンターのPUEは、1.2〜1.3にとどまっている。

〔2〕「けいはんなデータセンター」はPUE=1.1を実現

 2015(平成27)年度に終了した、日本における中小規模のデータセンター実証注8〔前期のATR内(けいはんな学園都市)に構築した「けいはんなデータセンター」実証、サーバは360台稼働〕では、前出の図2の右下の印に示すように、終了時点のPUEは1.1にまで効率を上げるところまできた。この数値は、通常の大型データセンター注9が1.2〜1.3にとどまっている中で、かなりハイレベルな値なのである。

 そうはいっても、まだ目標とするPUE=1.0には到達していない。前期の実証にさらに抜本的な技術開発行い、2018年までにPUE=1.0、すなわち図2の紫色部分にある印のラインまでの実現をプロジェクト目標として今回提案したのである。


▼ 注7
PUE:ピーユーイー。Power Usage Effectiveness、電力使用効率。データセンター設備のエネルギー効率を表す指標。2007年、The Green Grid(グリーン・グリッド。米国のデータセンターの省エネ化を推進する業界団体)が発表した。
【PUE=データセンター全体の消費電力÷ICT機器(サーバ)の消費電力】
例:データセンター全体の消費電力が200kW、ICT機器(サーバ)の消費電力が100kWの場合、PUE=(100kW+100kW)÷100kW=2.0となる。
PUE=1.0とは、データセンター全体において、サーバ以外の電力消費を0にすることを意味する〔PUE=(100kW+0kW)÷100kW=1.0〕。

▼ 注8
前期のATR内(けいはんな学園都市)に構築した「けいはんなデータセンター」実証。サーバは360台稼働。ATR:Advanced Telecommunications Research Institute International、株式会社国際電気通信基礎技術研究所

▼ 注9
大型データセンターとはICT機器、すなわちサーバが1万台規模以上のもの、中小規模のデータセンターとはサーバが数百〜1,000台規模のものをいう。数の論理からサーバの台数が少ないほどPUEを下げることが難しい。

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