日本の未来:制御システムのサイバーセキュリティ対策
─編集部:最後に日本の未来についてお聞かせください。制御システムのサイバーセキュリティ対策で、グローバルリーダーになるにはどうすればいいでしょうか。
〔1〕日本はすでにグローバルリーダー
新:私が理事長を務めているCSSCには、2つのミッションがあります。
1つは国内に安心・安全を届けるということ。もう1つは、海外にも同じように安心・安全を提供することです。冒頭に述べたように、日本のインフラは非常に品質が高く、保守・運用の技術、プロセス、セキュリティの技術なども決して低いわけではありません。
CSSCでは、宮城県多賀城市のテストベッド注7を使って日本のインフラ設備、技術の認証(IEC 62243注8)を行っています。
欧米の場合、重要インフラセキュリティは国防や軍事にかかわるため、技術の詳細が表にでてこない傾向があります。民間主導の日本は、この点でも国際標準に準拠した設備や技術を各国に展開できる強みがあります。多賀城市のテストベッドには、各国から大臣クラスの視察を含む1,000人以上が訪れ、世界から、その取り組みが注目されています。
この意味では、日本はグローバルリーダーだといえると思います。あとは、これを続けていくことですね。
〔2〕日本のプレゼンスをもっと上げていく
渡辺:日本の設備は品質が高いがセキュアではない(大きい被害に弱い)。これに対して欧米では、品質はそこそこだが、セキュリティはパニック対応も含めて進んでいます。さきほどの軍事・非軍事という違いもありますが、日本と欧米で品質、セキュリティ、インテリジェンスなどお互い不得手な分野で補完しあうことで、グローバルでの日本のプレゼンスをもっと上げていく余地はあると思っています。
▼ 注7
テスト用の模擬プラント。
▼ 注8
IEC 62243:Artificial Intelligence Exchange and Service Tie to All Test Environments (AI-ESTATE)、「検査環境と連携した電子機器」という意味。国内では「制御システムセキュリティ標準」と呼ばれている。