太陽光発電の普及と2019年問題・2032年問題
〔1〕住宅用(10kW未満)太陽光発電の搭載率は7.2%
政府は、エネルギー基本計画(2010年6月、第3次計画)において、「住宅については、2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEH注11を実現することを目指す」という目標を示したが、これを受けて、経済産業省は2015年12月に「ZEHロードマップ検討委員会とりまと
め」注12を発表した。これによって、ZEHの標準仕様化やスケジュールが明確になったところから住宅用太陽光発電の導入についても、注目されるようになった。
現在、日本における住宅総数2,860万戸のうち、2016年末時点において住宅用太陽光発電の導入件数は205万件(累計)となっており、その搭載率は7.2%である。
現在、既築用PVの導入は停滞気味であるが、新築用PVの導入は堅調であり、ZEHによってさらなる普及が期待されている。
〔2〕住宅用PV調達価格
前述したように、太陽光などの再エネの最大限の導入と、FIT制度による買取価格などによる国民負担の抑制の両立を図るため、コスト効率的な導入拡大が求められている。
例えば、FIT制度の開始後、すでに買取費用は約2.3兆円(賦課金は約1.8兆円。平均的な家庭で毎月675円)に達しており注13、その解決のため、次に説明するような買取価格(売電価格)が確定された。
〔3〕住宅用・非住宅用の太陽光用の売電価格
売電単価が安くなってもユーザーメリットが維持できるような視点から、政府の調達価格等算定委員会において、表3に示すように、平成29(2017)年度、30(2018)年度、31(2019)年度の住宅用太陽光の売電価格が確定した。
表3 平成29年(2017)年度以降の新規参入者向け買取価格〔住宅用太陽光(10kW未満)〕
※現時点では、平成27年4月1日以降、北海道電力、東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力に接続しようとする発電設備が設置の義務付けの対象となっている。
出所 経済産業省「第28回 調達価格等算定委員会」、平成28(2016)年12月13日、
http://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/pdf/028_02_00.pdf
http://www.meti.go.jp/press/2016/03/20170314005/20170314005.html
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/data/kaitori/2017_fit.pdf
非住宅用太陽光〔10kW以上2,000kW(2MW)未満〕については、平成29(2017)年度のみ21円/kWhと決定された注14。ただし、2MW以上については、入札によって買取価格が決まる。
買取期間(調達期間)は、これまで通り、住宅用が10年、非住宅用が20年となる。
〔4〕FIT法の改正:認定制度の変更
このように、2019年度までの買取価格が確定する一方、改正FIT法が2017年4月1日から施行された。
改正FIT法では、FIT認定を受けた再エネ発電事業者において適正な事業が実施されるよう、その認定制度は従来の「設備認定」から「事業計画認定」に変更され、太陽光発電システムのメンテナンスや設備撤去、処分などの計画の適切性も含めて審査され、認定されることとなった注15。
また、FIT電気の買取義務者を小売事業者から送配電事業者(一般送配電事業者と特定送配電事業者)に変更された。
〔5〕2019年問題と2032年問題
このような新しい動きのなかで、2017年1月に開催された、新エネルギー小委員会注16では、2019年の買取期間終了後の住宅用PVへの対応なども今後の課題として取り上げられた。このように、住宅用PVはアフターFIT問題が最重要課題として浮上してきた。
前述したように、「住宅用PV」に関しては、FITに先駆けて2009年11月から余剰買取制度がスタートしているため、2019年11月頃から10年間の買取期間が終了するケースが出てくる。また、2012年7月から開始されたFITが適用された「非住宅用PV」は買取期間が20年間であるため、買取終了案件が発生するのは2032年以降になる。
このように、両者の開始時期や買取期間が異なるため、問題の発生時期がずれて生じる。これをモデル化したのが図9である。
図9 買取期間終了分のPV電源容量〔第1期(2019年問題)と第2期(2032年問題)〕
出所 一般社団法人 太陽光発電協会:「JPEA PV OUTLOOK〜 太陽光発電2050年の黎明 〜」、2017年6月
(1)2019年問題:第1期(2019〜2032年)
図9に示すように、2019年から住宅用PVは、FIT買取期間終了電源が発生するが、その容量の規模は年間2GW以下の容量であり、2032年までの累積容量でも20GW程度である。
(2)2032年問題:第2期(2032〜2050年)
(1)に対して2032年度以降は、非住宅用PVの買取期間終了電源が短期間で大量に出現し、2035年には累積容量で住宅用を上回ることになる(図9の「赤色の実線」と「緑色の点線」が交差する地点)。
この2つの期間では、買収終了に際して発生する問題の本質が大きく異なるため、異なる対策が求められている(表4)。
表4 FIT制度と2019 年問題・2032 年問題の整理
出所 各種資料をもとに編集部作成
この対策については太陽光発電協会発行の「太陽光発電2050年の黎明」で、「2019年問題」「2032年問題」として詳しく解説されているので参照していただきたい。
▼ 注11
ZEH:Net Zero Energy House、「ゼッチ」ともいわれる。エネルギー消費量が正味ゼロの住宅のこをいう。ここでいう「正味ゼロ」とは、省エネによってエネルギー消費量を少なくしながら、そのエネルギー消費量と同じ量のエネルギーを太陽光発電やエネファームなどによって自ら発電できる住宅のこと。
▼ 注12
経済産業省「ZEHロードマップ検討委員会とりまとめ」、平成27年12月
▼ 注13
資源エネルギー庁「改正FIT法に関する直前説明会」、平成29(2017)年2・3月
▼ 注14
http://www.meti.go.jp/press/2016/03/20170314005/20170314005.html
(参考)平成28(2016)年度は24円/kWhであった。