[特集]

200GWの導入を目指す太陽光発電の「2050年長期ビジョン」

― 太陽光発電協会が公開! 2019年問題と2032年問題にも言及 ―
2017/08/10
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

今後の市場拡大と新しいビジネス

〔1〕アグリゲートビジネス

 これまで見てきたように、電力供給は大型火力などの集中型発電から、再エネなどによる分散型電源(小規模な自然変動電源)への移行が加速していく。このような分散型電源を電力インフラの中にどのように組み込んで、安定供給できる電力システムを実現していくかという課題がある。そこで登場してきたのがアグリゲータビジネスである。

 小規模な分散型電源を広域的に集約して(アグリゲートして)、制御する技術が進化してきているが、その役割を果たすのが、図10に示すアグリゲート事業者である。

図10 アグリゲータ事業とその関係者(ステークホルダー)

図10 アグリゲータ事業とその関係者(ステークホルダー)

出所 一般社団法人 太陽光発電協会:「JPEA PV OUTLOOK~ 太陽光発電2050年の黎明 ~」、2017年6月

〔2〕地産地消モデル

 また、再エネによる分散電源の拡大ともに、地域内に設置された電源で地域のエネルギー需要をまかなう地域電力会社も次々と誕生している。さらに、自治体と地域住民も参加する新しい市民電力会社も生まれている。今後、低圧託送料金注17の低減化次第で、地域電力での活性化がさらに進むと考えられている。

 なお、家庭やビル用に普及しているHEMSやBEMSなどの自家消費を促すシステムも、狭義の地産地消モデルと言われている。

〔3〕VPP(仮想発電所)

 さらに、VPP(Virtual Power Plant、仮想発電所)が次世代ビジネスとして登場し実証実験が活発化している。VPPとは、分散配置される発電システムや貯蔵装置(蓄電池等)などのエネルギー設備を、デマンドレスポンス(電力の需給管理)や、IoTによって、あたかも1つの発電所のように制御するシステムである。

 VPPは、近隣の小規模な太陽光発電や地域的に離れた大規模な太陽光発電、電気自動車の蓄電池などを、面的に連携させることによって、電力系統運用での需給バランスを最適化し、一体運用を可能とするシステムである。このVPPは、従来の電力システムの概念を変えてしまうため注目されており、再エネ時代の新しい電力ビジネスとして大きな期待が寄せられている。

 すでに、政府のERAB検討会注18での議論をベースに、複数の蓄電池などの設備を統合制御し、電力需給の調整に活用する実証試験などを含む2016年度の第1次実証が終わ

注19、2017年度の第2次実証が2017年7月からスタートしている(注:今月号「Monthly Topics」を参照)。

〔4〕太陽光発電システムの保守点検、リプレースビジネスなど

 また、太陽光発電システムの普及に伴って、保守点検や設備の撤去・廃棄物処理、リサイクル事業、設備のリプレースビジネスなどの市場も、今後の新ビジネスとして注目されている。


▼ 注17
託送料金:電気を送る際に電力会社が利用する送配電網の利用料金のこと。託送料金は送配電事業者に支払う。

▼ 注18
ERAB検討会:Energy Resource Aggregation Business Committee、分散された需要家側のエネルギーリソース(太陽光発電、蓄電池、電気自動車、エネファーム、ネガワット等)をIoTなどで統合して活用し、新たなビジネス領域として、アグリゲーションビジネスを検討する委員会。2016年1月設立。

▼ 注19
本誌2017年6月号、「特集1 VPP構築実証事業第1年度の7プロジェクトから見えた成果と課題」「特集2 公開された丸紅/エナノック・ジャパンによるディマンドリスポンス(DR)の実証事業」

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