[特別レポート]

エッジ・コンピューティングを加速するクアルコムのIoTプラットフォーム戦略

― 世界初の30億個のトランジスタを搭載したSnapdragon 835を核に ―
2017/10/17
(火)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

TurboXソリューションの提供

〔1〕サンダーコムのIoT SOMソリューション

 先に紹介した、合弁会社サンダーコムでは、Snapdragonシリーズをベースに、ドローン、VR/AR、ロボット、ウェアラブル、インテリジェントカメラなどのIoTデバイスをターゲットに、プラットフォームを開発し、提供している。

 これによって、IoT市場に新規に参入する企業が、複雑化し高機能化するIoTデバイスをいかにコストを抑えて開発するか、という課題を解決できるようにしている。

 この課題解決のために、同社は次のようなTurboXプラットフォームを提供している。

TurboX SOM + IoT OS/SDK + AIアルゴリズム

 これは、SnapdragonをベースにしたSoM(System on Module、モジュール)上に、最適なIoT向けOS(LinuxおよびAndroidなど)やSDK(ソフトウェア開発キット)、AIアルゴリズム(処理手順)を搭載し、IoT機器の開発者が製品開発にすぐに使えるパッケージとして提供している。

 すでに、さまざまなIoT機器への展開が促進しており、IoT SOMソリューションとして表4に示すようなラインアップが量産されている。

表4 TurboX SOMラインアップの例

表4 TurboX SOMラインアップの例

出所 サンダーソフトジャパン「Qualcomm SnapdragonのIoT市場への展開」(2017年8月24日)をもとに編集部で作成

 例えば、表4には、

  1. Snapdragon 801を搭載した目標追跡や自動航路計算機能などを組み込んだドローン向けSOM(Linux OS)
  2. 最新のSnapdragon 835を搭載したDaydreamやTangoに対応したVR向けSOM(AndroidOS)
  3. Snapdragon 625を搭載した物体認識や動画アルゴリズムなどを組み込んだカメラ向けSOM(Linux OS)

などが、TurboXSOMソリューションとしてラインアップされている。

 写真4は、サンダーソフトのドローンソリューションを利用した高品質カメラドローンのデモの様子である(表4参照)。

写真4 Hover Camera Passportドローンのデモ(表4参照)

写真4 Hover Camera Passportドローンのデモ(表4参照)

サンダーソフト社のドローンソリューションを利用した高品質カメラドローン。スマートフォン(Wi-Fi通信)でHover Cameraの撮影画面を表示し、搭載したカメラの撮影の開始や停止などが制御できる。Hover Cameraの開発元は中国のゼロゼロロボティクス(Zero Zero Robotics)。
出所 編集部撮影

〔2〕組込みAI(ディープラーニング)への応用

 さらに、TurboXプラットフォームは、直接クラウドへ接続しなくとも、学習済みのAIアルゴリズムをローカルなデバイス(Snapdragon)上で効率よく実行するSnapdragon NPE注11によって、ディープラーニングのフレームワークであるCaffe/Caffe2注12やTensorFlow注13で学習されたネットワークモデルを高速に、効率よく実行できる「組込みAIの仕組み」(図5)も提供している。

図5 Snapdragon上で実行される組込みAIの仕組み

図5 Snapdragon上で実行される組込みAIの仕組み

DLCフォーマット:Deep Learning Containerフォーマット(ディープラーニング・アプリケーションのフォーマット。
コンテナ:必要なアプリケーションを格納し動作させる専用領域のこと)
DLアプリ:Deep Learning(ディープラーニング)アプリケーション。
NPE Rutime:NPEアプリの実行
出所 サンダーソフトジャパン「Qualcomm SnapdragonのIoT市場への展開」2017年8月24日、
参考 https://developer.qualcomm.com/software/snapdragon-neural-processing-engine

 これによって、サンダーソフトは、ディープラーニング注14で重要となる画像認識アルゴリズム注15をSnapdragon NPE上に実装し、NPEを使用しなかった場合に比べて3倍以上の性能向上を実現している。


▼ 注11
Snapdragon NPE:Snapdragon Neural Processing Engine、クアルコムのSnapdragonシリーズで、ディープラーニング(AIコンピューティング)を可能にするフレームワーク(2017年7月発表)。そのソフトウェア開発キット「Snapdragon Neural Processing Engine SDK」は、Qualcomm Developer Networkから配布されている。

▼ 注12
Caffe/Caffe2:ディープラーニングのフレームワーク。Caffeは、カリフォルニア大学バークレー校が中心となって開発され、Caffe2はFacebookによってモバイル向けプロセッサ向けに最適化され、オープンソース化されたフレームワーク(2017年4月発売)。

▼ 注13
TensorFlow:テンソルフローまたはテンソーフロー。グーグルが2015年の11月に公開したディープラーニングライブラリ(オープンソース)。

▼ 注14
ディープラーニング(Deep Learning):AI(人口知能)の中心に位置するもので深層学習といわれる。例えば、単にモノが動くというレベルから、鳴き声の違い、大きさの違いなど何段階(何層)もの違い(データの違い)を認識したうえでイヌかネコかを判断する(すなわちコンピュータが人間の目のような機能をもつようになる)。

▼ 注15
画像認識アルゴリズム:ディープラーニングによって、画像に写っている物体を、例えば「ネコかイヌか」を認識できるようにするコンピュータの処理手順(アルゴリズム)。

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