IoTプラットフォームと自動車の融合ポイント
写真3 カーシェアを実現するトヨタのスマートキーボックス(SKB)
出所 筆者撮影
〔1〕トヨタのMSPFプラットフォーム
トヨタ自動車は、カーシェアリングなどのモビリティサービスの国際的な普及に対応するため、同サービスに必要となる、さまざまな機能を備えた「モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)」の構築を推進している。MSPFは、図1に示す既存のトヨタスマートセンター〔トヨタビッグデータセンター(TBDC:Toyota Big Data Center)などを含む〕、および金融・決済センター(TFS)の、上位に位置するものだ。
さらに、トヨタではMSPFの一機能として「スマートキーボックス(SKB)」(写真3)を開発した。これによって、
図1 トヨタのモビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)
TFS:トヨタファイナンシャルサービス(株)、自動車販売金融サービス等を提供する、トヨタの金融会社の統括会社。金融決済センターなどがある。
OTA:Over The Air、自動車に使用されている多くのECU(電子制御ユニット)のソフトウェアを無線通信で更新する機能
DCM:Data Communication Module、車載通信機
TBDC:Toyota Big Data Center、トヨタビッグデータセンター。トヨタとマイクロソフトが共同で北米に設立
出所 http://newsroom.toyota.co.jp/en/detail/14096246
- カーシェアを利用するとき、車両の所有者がSKB端末を車内の任意の場所に設置しておくと、
- 車両の利用者は、スマートフォンのアプリを操作して、トヨタスマートセンターからSKB端末にアクセスするための暗号キーを受信できる。
- また利用者がスマートフォンを車両に近づけると、SKB端末との間で暗号キーが認証される。
このように、通常のスマートキーと同様、クルマの鍵の開閉などの操作を行うことが可能となる。操作可能な時刻や期間は、利用者の予約内容に応じてセンターで設定・管理することもできる。
〔2〕スマートフォン軸のサービスと自動車の融合
(1)SDLCの設立
トヨタは、スマートフォンとクルマをつなぎ、スマートフォンアプリを車内で利用するためのオープンソースの仕様「スマートデバイスリンク」(SDL:Smart Device Link)を管理する非営利団体「スマートデバイスリンク・コンソーシアム(SDLC)」注5を、関係企業と2016年1月に設立した。
SDLCには、フォードやトヨタに加え、富士重工業、マツダ、スズキ、PSAグループ、およびElektrobit、Luxoft、Xevoなどのサプライヤーが参画している注6。
(2)KDDIとの共同でAIスピーカーのデモ
SDLCは、自動車を利用するユーザーが、スマートフォンアプリを車内でスムーズに利用できるよう、SDLが自動車業界の標準となることを目指している。トヨタは、日本市場では2018年から販売店装着オプションとしてSDLに対応したマルチメディア車載機を商品化する。この商品では、LINEから提供される「LINE MUSIC」をはじめ、さまざまなスマホのアプリが車内で使えるようになる。
さらに2019年には、新しく、工場で装着するマルチメディア車載機を製品化する。この製品では、さまざまなナビゲーションアプリ、音声認識によるアプリ操作、LINEから提供されるAIスピーカー「Clova WAVE」などもクルマの中で使えるようになる。TMS2017と併設されたTOKYO CONNECTED LAB 2017のトヨタブースでは、KDDIとの共同デモが行われた(写真4)。
写真4 トヨタとKDDIによるLINEのAIスピーカー「Clova WAVE」共同デモ
出所 筆者撮影
〔3〕三菱:AIスピーカー2機種をデモ
LINE以外のAIスピーカーでは、三菱自動車のブースにおいて、「Amazon Echo」と「Google Home」を使用するAIスピーカーを応用したデモが行われた(写真5)。
写真5 Google Home(左)による車と家との連携(三菱自動車)
出所 筆者撮影
「Google Home」は、音声認識で音楽の再生、知りたいことの検索、予定の確認や、スマート家電の操作などを行うことができる。
三菱自動車では、コネクティッドカーサービスの1つとして、車と家との連携の可能性に取り組んでいる。ブースでは、スマートスピーカー(AIスピーカー)と自動車の連携機能として、ヘッドライトの点灯、車内の温度調節、ドアをロックする機能などのデモが行われた。