Daimlerは2017年9月5日(ドイツ時間)、同社が開発中の燃料電池車の新車種「Mercedes-Benz GLC F-CELL」を9月14日~24日に開催予定のフランクフルトモーターショー(IAA:International Motor Show)で公開することを明らかにした。Mercedes-Benz GLC F-CELLは、2016年6月に発表した車種で、2017年中の発売を目指して開発を続けていた。Daimlerによると、開発中のMercedes-Benz GLC F-CELLを一般に公開するのは、これが初めてになるという。そして公開する車両は、量産前の試作車であることも明かしている。
図 Mercedes-Benz GLC F-CELLの試作車
出所 Daimler
ほかの自動車メーカーと同じように、続々と電気自動車(EV)の発売計画を打ち出しているDaimlerだが、燃料電池車の技術も高く評価している。EVに比べて長い距離を走れて、燃料補給には時間がかからず、個人向け乗用車からバスなどの大型車両にも応用可能という点は、EVよりも明らかに優れている。しかし、燃料となる水素を補給するステーションの数がまだまだ少ない点が最大の問題となって、燃料電池車の普及はなかなか進んでいない。
Mercedes-Benz GLC F-CELLは、水素ステーションが少ないという現状に対応する機能を備えている。電源として燃料電池のほかに、外部から充電可能なリチウムイオン蓄電池を搭載しているのだ。この蓄電池は蓄電容量が9kWhで、住宅にある充電器や、充電ステーションで充電でき、蓄電池の電力だけで50kmほど走行できる。また、減速時の回生電力もこの蓄電池に充電する。水素ステーションまでまだまだ距離があるというときに、とりあえず充電して水素ステーションまで走行するという使い方が可能だ。Mercedes-Benz GLC F-CELLは、燃料電池と蓄電池の電力の両方を使うことで、最長でおよそ500km走ることができる。
図 Mercedes-Benz GLC F-CELLは、車体後部から内蔵蓄電池に充電できる
出所 Daimler
燃料電池にも改良が加わっている、前世代の燃料電池と比べておよそ30%の小型化に成功し、水素を反応させる触媒となるプラチナ(Pt、白金)の使用量を90%削減したという。プラチナ触媒は、燃料電池車のコストダウンの大きな障害となっており、代替物質の開発が世界各地で進んでいる。プラチナの使用量を大きく削減したことで、車両本体の販売価格低下に期待がかかる。
DaimlerはすでにMercedes-Benz GLC F-CELLの試作車をヨーロッパ各地の公道で試走させて、その性能の検証を済ませている。試走では、スペインのバルセロナ周辺、同じスペインのシエラネバダ山脈、スウェーデンのアリエプローグ、ドイツのボックスベルクなどの場所を走行したという。
今回、フランクフルトモーターショーで披露する車両は、こうした試験をクリアした、量産前の試作車となる。2016年6月の発表時に掲げた、2017年中の発売も十分可能なものと考えられる。
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