[クローズアップ]

【第45回東京モーターショー2017】加速するEV(電気自動車)時代へのパラダイムシフト

― IoT/AIと自動車の融合、ZEV実現に向けた「RE100」と「水素協議会」の動き ―
2017/12/08
(金)
奥瀬 俊哉 コントリビューティングエディター/インプレスSmartGridニューズレター編集部

次世代車載用蓄電池:全固体リチウムイオン電池の開発へ

 ここまで、TMS2017における国際的な電気自動車(EV)などの動きを見てきたが、EVの航続距離を延ばす面からも、VPP実現の面からも、新型の蓄電池(バッテリー)の開発が国際的に期待されている。日本では、

図2に示すように、次世代車載用蓄電池の実用化に向けた基盤技術の開発が活発化している。

図2 次世代車載用蓄電池の実用化に向けた基盤技術開発

図2 次世代車載用蓄電池の実用化に向けた基盤技術開発

出所 http://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2018/pr/en/sangi_taka_22.pdf、経済産業省「平成30(2018)年度 資源・エネルギー関係概算要求の概要」、平成29(2017)年8月、http://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2018/pdf/01_4.pdf

 具体的には、運輸部門全体の省エネやCO2排出量削減に向けて、日本は2030年までに新車販売に占める電気自動車などの割合を最大30%にする目標を掲げている。その達成に向け、ガソリン車並の航続距離をもつ電気自動車の実現が期待されており、そのキーとなるのが「車載用蓄電池」だ。

 現在、車載用蓄電池の国際競争が激化しているが、産学の緊密な連携の下に、現行の液系リチウムイオン電池(LIB:Lithium Ion Battery)に比べてエネルギー密度の高い全固体LIB(リチウムイオン電池)の開発、さらに新原理による性能を大幅に向上させる革新型蓄電池注11の研究開発を行い、世界に先駆けた次世代車載用蓄電池の実用化を加速させている。

 これに向けて、平成30(2018)年度概算要求額として48.0億円(2017年度は32.7億円)が計上された。

ZEVに向けて注目される「RE100」と「水素協議会」

〔1〕RE100(Renewable Energy 100%)の活動

 COP21(パリ協定)の発効(2016年11月4日)に伴って、ドイツやフランスが2040年までにガソリン・ディーゼル車の販売を禁止する方針を出し、また大気汚染が深刻化している中国やインドをはじめ、米国のカリフォルニア州や各自治体において、CO2の排出規制が強化された。このため、従来のエンジン自動車からEVへのシフトが急速に進んでいる。

 このようななか、事業運営を100%再エネで行うことを目標とし、それを宣言した企業が加盟するイニシアティブ「RE100」が注目されている。RE100は、2014年9月に設立され、国際環境NGOのThe Climate Group(TCG)によって運営されている。すでに113社の企業が参加を表明注12しており、自動車産業からはドイツのBMWグループ、米国のGM、インドのタタ・モーターズなどが、参加している。

〔2〕水素協議会(Hydrogen Council)の活動

 トヨタ自動車や本田技研工業、BMWグループ、ダイムラー、エア・リキードなど13社が2017年1月に設立した「水素協議会(Hydrogen Council)」(会員数は2017年9月現在24社。)は、2017年11月13日、COP23(気候変動枠組み条約ボン会議)の場で、2050年までに水素エネルギーが世界の全エネルギー需要の約2割を賄えるとするレポートを発表した注13

 このような新しい動きは、単に蓄電池と電動モーターによるクルマをEVと呼ぶのではなく、EVの生産から走行、廃棄に至るまですべてのプロセスでエコを考慮したクルマこそが、真のエコカーと呼ばれる時代が到来していることを示している。すなわち、CO2ゼロ社会へ向けたZEVへのシフトが、国際的な大きな流れとなってきているのである。

 すでに、米国のカリフォルニア州では、2018年からZEV導入が強化され、同州で販売される一定数のクルマをZEV〔EVやFCV(燃料電池自動車)〕にすることを義務付けるZEVプログラムを導入、他の州への広がりも加速させている注14


▼ 注11
革新型蓄電池:明確な定義はないが、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、2030年頃に要求される、現行の電池系では実現できないような高い性能を達成できる可能性のある電池系を「革新型蓄電池」命名した。例えば、金属-空気電池、リチウム硫黄電池などがある。

▼ 注12
日本からは、リコーに続き、2社目として2017年10月20日に積水ハウスが加盟した。

▼ 注13
https://sustainablejapan.jp/2017/11/24/hydrogen-council-report/29215

▼ 注14
ZEVプログラム:Zero Emission Vehicle(ZEV)Program、CARB(California Air Resources Board、米国カリフォルニア州大気資源局)が施行している制度。同州内で一定台数以上自動車を販売するメーカーに対し、ZEVを一定比率(2017年時点で14%)以上販売することを義務付ける制度。2018年から16%に引き上げられる。
https://www.arb.ca.gov/msprog/zevprog/zevprog.htm
https://www.hyogo-mitsubishi.com/news/car20170728080000.html

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