コネクテッドカーの実現とセキュリティ
写真6 オムロンの「コネクテッド・ゲートウェイECU」
出所 筆者撮影
〔1〕オムロン:セキュリティ性能の高いECUを開発
オムロン オートモーティブエレクトロニクス(OAE:OMRON Automotive Electronics)は、セキュリティ性能の高いコネクテッドカーの実現に向け、無線通信機能付ゲートウェイユニット「コネクテッド・ゲートウェイECU」(ECU:Electric Control Unit、車載制御ユニット)を開発し、展示した(写真6)。
「コネクテッド・ゲートウェイECU」は、セキュリティ機能、最大6チャネルのCAN注7ゲートウェイ機能、BLE(Bluetooth Low Energy)通信機能の3つの機能を一体化した、縦76.0mm×横69.0mm×厚さ27.5mmというコンパクトサイズのECU(電子制御装置)である。
インターネットを経由して交通インフラ情報を取得したり、クルマ同士で通信し合いお互いの位置を把握したりすることによって、交通渋滞や事故を防ぐモビリティ社会は、ユーザーにとって恩恵となる。その一方で、ハッキングやコンピュータウィルスなどによるサイバー攻撃、および位置情報の漏えいなどのさまざまな脅威が課題となる。そこで、OAEでは、ファクトリーオートメーションに用いられる制御機器や交通管理・道路管理システムなど、これまでオムロングループが幅広い事業領域で蓄積してきた最新のセキュリティ対策技術を活用して、この「コネクテッド・ゲートウェイECU」が開発された。
〔2〕コネクテッドカーとセキュリティ
また、自動車とスマートフォンの融合が進むと、「セキュリティを想定したIoTプラットフォーム」を確立することが最優先事項となる。
このため、セキュアIoTプラットフォーム協議会が主催したTMS2017シンポジウムでは講演が行われ、コネクテッドカーに必要な各種のセキュリティ技術動向が紹介された。
BMW:再エネ100%の工場で電気自動車「BMW i3」を生産
次に、究極のEVエコカーとして注目されている、ドイツのBMWの電気自動車「BMW i3」(写真7)を紹介しよう。
写真7 ドイツの電気自動車「BMW 3i」
出所 編集部撮影
創業100年余(1916年設立)を超えたBMW注8は、3年前の2014年に発売した電気自動車「BMW i3」のバッテリーアップグレード版のニューモデルを出展した。カタログ仕様では航続距離390㎞となっているが、エアコンなどを使用すると200〜250㎞が実効距離である。急速充電(日本向けはCHAdeMOプラグ注9)と家庭用の普通充電に対応している。
バッテリーの電気がなくなってしまった場合は、レンジエクステンダーシステム(航続距離延長システム)によって、さらに100㎞程度の走行が可能となっている。660ccのスクーター用の2気筒の発電用エンジンを搭載し、そのための9リットルのガソリンタンクが設置されている注10ので、電気がなくなっても、エンジンで電気を発電して充電し100㎞程度走行できる(これをプラスすれば最大350㎞の航続距離となる)。
BMW i3は、生産の段階から温室効果ガス(CO2)のゼロエミッションにこだわっている。BMW i3を生産しているドイツのライプチッヒにある生産工場は、CO2を排出する火力発電や放射能廃棄物が出る原子力発電による電力は一切使用せず、4基の風力発電と水力発電による電気でBMW i3を生産している。また、車体を軽くするためにアルミより軽いカーボン繊維(炭素繊維)を使い、さらに車内の素材にユーカリウッドを使用しているが、使用するごとにユーカリの植樹をするなどの活動も行われている。まさに「人類を守る哲学」に徹底したエコカーとなっている。
同車の主な仕様は、車両サイズ:全長4,010mm×全幅1,775mm×全高1,550mm、車両重量/定員:1,420kg/4名、駆動用バッテリーはリチウムイオン電池、総電力量は33.2kWh。
▼ 注7
CAN:Controller Area Network。自動車などの機械の内部で、電子回路〔例:ECU(電子制御装置)〕やエンジンなどの各装置を接続するためのネットワーク規格。伝送速度は数十〜数百kbps(最大1Mbps)。
▼ 注8
BMW(ビー・エム・ダブリュ): Bayerische Motoren Werke AG(バイエリッシェ・モトーレン・ヴェルケ・アーゲー、バイエルンエンジン製造工場)。ドイツの自動車メーカー。本社はドイツのバイエルン州ミュンヘン。1916年設立。1981年に日本法人「BMW Japan」を設立。
▼ 注9
欧米の場合は、CCS(Combined Charging System)方式のプラグ。
▼ 注10
日本では電池切れへの心配が多ため、日本市場では90%近くが発電用エンジン付きとなっている。海外にはこのような需要はない。