IoTを活用して需要家側などに設置された、蓄電池や太陽光発電などのエネルギーリソースを統合することによって、あたかも1つの発電所(VPP、仮想発電所)のように機能させる、VPP構築実証事業が活発化している。このVPPで統合された電力を、市場取引などを通じて、電力系統の調整力としても活用できるようにするERAB(イーラブ)注1への取り組みが進展し、その実現が大きく期待されている。
経済産業省は、ERABに参画する送配電事業者や小売電気事業者、需要家、再エネ発電事業者などの各事業者が取り組むべき、サイバーセキュリティ対策をまとめたガイドライン「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)に関するサイバーセキュリティガイドライン」を改定し、Ver.1.1として公表した(平成29年11月29日注2)。
このガイドラインは、ERABの発展に向けて、通信規格や制度の整備などの多岐にわたる課題について、産官学の実務者レベルで全体像を整理するERAB検討会(平成28年1月設置)のサイバーセキュリティWGで検討されてきたもので、サイバーセキュリティ対策の指針となっている。今回の改定は、特に電源I’(イチ・ダッシュ)注3に関して、各事業者に求められるサイバーセキュリティ対策を中心に改定された。主な改定事項は次の通り。
- 認証や暗号化の仕組みの導入: 機器の相互認証や通信の暗号化の仕組みを導入し、各機器を保護すること。
- 特定されたアグリゲータからの接続のみに限定:送配電事業者のシステムへの接続は、特定されたアグリゲータのシステムのみからの接続に限定すること。
注1 ERAB:Energy Resource Aggregation Business、VPPやディマンドリスポンス(DR)を用いて、送配電事業者、小売電気事業者・需要家、再エネ発電事業者といった取引先に対して、調整力、インバランス回避、電力料金削減、出力抑制回避などの各種サービスを提供する事業のこと。
注2 http://www.meti.go.jp/press/2017/11/20171129002/20171129002-1.pdf
注3 電源I’(イチ・ダッシュ):一般送配電事業者の専用電源として常時確保する電源などをいう。10年に1回程度の猛暑や厳寒に対応するための調整力。