[特集]

― 復興から発展へ ― 福島県相馬市の新総合計画と新ビジネスの可能性

2018/08/01
(水)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

52.5MWもの大規模太陽光発電所

〔1〕被災跡地に巨大なメガソーラーが出現

写真5 震災当日の津波が引いた後の磯部地区の状況(2011年3月11日16時10分頃)

写真5 震災当日の津波が引いた後の磯部地区の状況(2011年3月11日16時10分頃)

出所 平成23(2011)年3月11日発生:東日本大震災の記録「第2回中間報告」

写真6 空から見た52.5MW(52,452kW)の大規模太陽光発電所(右上が太平洋)

写真6 空から見た52.5MW(52,452kW)の大規模太陽光発電所(右上が太平洋)

出所 http://www.kyudenko.co.jp/press/docs/press_20170601.pdf

 一方、震災で被災した相馬市の磯部地区には、巨大なメガソーラーが構築されている。災害当時と比較するために示すと、写真5は、3.11震災当日の津波が引いた直後の磯部地区の被災状況である。

 このような大きな被害を被った磯部地区に、九電工(福岡県福岡市)など5社注2によって共同で設立された「合同会社レナトス相馬ソーラーパーク」が、最大出力52.5MW(52,452kW)の大規模太陽光発電所(メガソーラー)を構築(写真6)し、2017年6月1日、運転が開始された。

〔2〕まるで太陽光パネルの海のようだ

 旧田んぼであったところへ約20万枚もの太陽光パネル群が設置され、その年間予想発電量(初年度)は約6,000万kWhである。これは、一般家庭の約17,000世帯分の年間消費電力に相当する。

 写真7は、平地から撮影した壮観な太陽光パネル群である。写真7中央上部右に見える建屋は変電設備である。

写真7 平地から見た大規模太陽光発電所の太陽光パネル

写真7 平地から見た大規模太陽光発電所の太陽光パネル

最上部の白い部分が津波対策の防潮堤となっている。
出所 編集部撮影

 また、写真7最上部の太平洋との境界に白い横線のように見えるのが、津波対策の防潮堤(現在も工事中)だ。この太陽光パネル群は、磯部水産加工施設から県道を南相馬方面に向かって1km程度近く下ったところにある「絆カフェいそべ」(後述)の近くまで、道路に沿って左右に、まるで太陽光パネルの海のように、延々と設置されている。

 相馬市磯部地区には、解決すべき課題はまだ多くあるが、復興事業が1つの区切りを迎えたかのように、2018年4月18日、地域の人たちの絆が強まることを願って、モダンな「絆カフェいそべ」(写真8)がオープンした。その運営は、同地区で大規模な太陽光発電所を運営する北斗電気設備工事であり、カフェはこれら太陽光発電所からの電力を利用している。

写真8 2018年4月18日にオープンした「絆カフェいそべ」

写真8 2018年4月18日にオープンした「絆カフェいそべ」

出所 編集部撮影

 相馬市の地産地消を目指したエネルギーへの取り組みは、他自治体へも影響を与えるモデルの1つになるだろう。今後の展開に期待したい。


▼ 注2
九電工(福岡県福岡市)、オリックス(東京都港区)、ベルテクノエナジー(東京都千代田区)、九電みらいエナジー(福岡県福岡市)、北斗電気設備工事(福島県南相馬市)の5社。

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