[特集]

次世代ビジネスのパラダイムを変える脱炭素化への新しい動き

― SDGs/パリ協定と3つの新国際組織「RE100・EP100・EV100」 ―
2018/02/07
(水)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

地球温暖化対策として歴史的な「パリ協定」が2015年に締結されて以降、国際的に脱炭素化、低炭素社会の実現をビジネスの基本に据えた、企業の事業運営が活発化し、展開している。
国連では、17つの目標を掲げたSDGs(持続可能な開発目標)が策定され、第70回国連総会で「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択された。さらに、これらの動きに触発されて、3つの国際イニシアティブ「RE100・EP100・EV100」が設立され、2017年には、日本でもリコーや積水ハウス、アスクルなどの先進企業が相次いで参加し、注目を集めている。
ここでは、SDGs⇒パリ協定⇒RE100・EP100・EV100の流れを整理して見ていく。

SDGsからパリ協定への流れ

図1 「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の表紙

図1 「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の表紙

出所 https://sustainabledevelopment.un.org/content/documents/21252030%20Agenda%20for%20Sustainable%20Development%20web.pdf

〔1〕注目されるSDGs(エスデージーズ)

 国際連合憲章の下に、1945年に設立された国際機関「国連」(国際連合:United Nations)は、国際平和と安全の維持(安全保障)、経済・社会・文化などに関する国際協力の実現を中心課題として活動している。

 この国連本部(ニューヨーク)に、161カ国の加盟国の首脳が集まって開催された「国連持続可能な開発サミット」(2015年9月25〜27日)において、SDGs(エスデージーズ。Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)が策定され、第70回国連総会で「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ(Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development)」が採択された(2015年9月25日、図1)。

〔2〕MDGsからSDGsへ

 SDGsとは、国連で国際合意に達した2016年から2030年までの世界の長期目標であり、17の目標、169のターゲットが掲げられている注1。このSDGsの前には、MDGs(エムデージーズ。Millennium Development Goals、ミレニアム開発目標)があったが、これは2000年のミレニアムに、2000年から2015年まで15年間の長期目標として立てられたもので、SDGsは、MDGsに続くものとなっている。

〔3〕MDGsの目標と達成対象など

 このMDGsの目標数は次の8項目であり、その達成対象は発展途上国、達成主体者は政府、国際機関であった。

  1. 極度の貧困と飢餓の撲滅
  2. 普遍的初等教育の達成
  3. ジェンダー(gender、社会的性差)の平等の推進と女性の地位向上
  4. 乳幼児死亡率の削減
  5. 妊産婦の健康の改善
  6. HIV/エイズ、マラリアおよびその他の疾病の蔓延防止
  7. 環境の持続可能性の確保
  8. 開発のためのグローバル・パートナーシップの推進

 一方、SDGsは、飢餓や初等教育、健康など8個の目標のみを対象としたMDGsとは異なり、SDGsでは経済、気候変動、海洋汚染なども盛り込まれ、その目指す目標数はMDGsの2倍以上(17個の目標)となった(図2、表1)。

図2 SDGsの17の目標(ゴール):「気候変動」は下図ゴール「13」が開発目標となっている

図2 SDGsの17の目標(ゴール):「気候変動」は下図ゴール「13」が開発目標となっている

※2018年1月1日付で、「ゴール10」のアイコンだけが上図のように変わった。
出所 http://www.unic.or.jp/files/sdg_logo_ja_2.pdf
http://www.unic.or.jp/

表1 国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs:17ゴール)

表1 国連サミットで採択された持続可能な開発目標(SDGs:17ゴール)

〔赤文字は少なくとも環境に関連している12個のゴール〕(環境省)
出所 各種資料より編集部作成
http://www.env.go.jp/earth/sdgs/index.html
https://sustainablejapan.jp/2015/10/07/sdgs/19156
https://pub.iges.or.jp/system/files/publication_documents/pub/policyprocess/4981/20150925_sdgs2013agenda_iges_jp.pdf

〔4〕SDGsの目標数と達成対象など

 前述したように、SDGsの目標数は前出の表1に示す17項目であり、その達成対象は先進国と発展途上国であり、達成主体者は政府、国際機関、企業、NGOとなっている。

 この17項目のうち、最も気候変動に焦点が当てられた目標は表1に示す【目標13】である。

 それらは、次のような内容となっている。

【目標13】気候変動およびその影響を軽減するための緊急対策を講じる。

(13.1)すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)および適応の能力を強化する。

(13.2)気候変動対策を国別の政策、戦略および計画に盛り込む。

(13.3)気候変動の緩和、適応、影響軽減および早期警戒に関する教育、啓発、人的能力および制度機能を改善する。

<13.a>重要な緩和行動の実施と、その実施における透明性確保に関する開発途上国のニーズに対応するため、2020年までにあらゆる供給源から年間1,000億ドルを共同で動員するという、UNFCCC注2(気候変動枠組条約)の先進締約国によるコミットメントを実施するとともに、可能な限り速やかに資本を投入して緑の気候基金を本格始動させる。

<13.b>後発開発途上国および小島嶼(しょうとうしょ)開発途上国において、女性や青年、地方および社会的に疎外されたコミュニティに焦点を当てることを含め、気候変動関連の効果的な計画策定と管理のための能力を向上するメカニズムを推進する。

 参考URL
https://sustainablejapan.jp/2015/10/07/sdgs/19156


▼ 注1
https://sustainablejapan.jp/2015/10/07/sdgs/19156

▼ 注2
UNFCCC:United Nations Framework Convention on Climate Change

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