[特集]

横浜スマートビジネス協議会(YSBA)の新しい展開

実証から実装へ!エネルギー循環都市を目指す
2017/11/09
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

横浜市が「横浜スマートシティプロジェクト」(YSCP)の実証事業の成果をもとに推進している「実装事業」の取り組みが、全国から大きな注目を集めている。
横浜市は、市内の平均気温が100年間あたりで約2.7℃も急上昇するなど、異常な事態を迎えている。これに対応するための取り組みの1つとして、「横浜スマートシティプロジェクト」(YSCP)が推進されてきた。同プロジェクトの実証事業の成果をもとに、新たに「横浜スマートビジネス協議会」(YSBA)を発足させ、実装事業を展開している。
ここでは、YSCPの成果の総括とともに「エネルギー循環都市」を目指す横浜市エネルギーアクションプランを見ながら、2016年2月に完成した横浜市・南区総合庁舎の移転再整備や蓄電池によるVPP実証事業、エネルギーの面的展開(地域冷暖房システム)を推進する、新市庁舎における熱供給センター(2020年1月に竣工)などを見ていく。

横浜市内は100年あたりで気温が「2.7℃」も上昇

 全国の基礎自治体で第1位となる人口373万人を擁する神奈川県横浜市(表1、写真1)が、現在、直面している課題は、横浜市内の平均気温が、100年間あたりで約2.7℃も上昇していることである(図1)。この影響によって現在も、ゲリラ豪雨(40ミリ〜50ミリ注1)で道路が冠水するという事態が発生している。

写真1 神奈川県横浜市の外観(遠くに富士山も眺望できる)

写真1 神奈川県横浜市の外観(遠くに富士山も眺望できる)

出所 横浜市温暖化対策統括本部、「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)の取組と今後の展開について」、2017年9月

表1 横浜市のプロフィール

表1 横浜市のプロフィール

出所 横浜市ホームページを参考に編集部作成

図1 横浜市が直面する課題 : 地球温暖化の影響

図1 横浜市が直面する課題 : 地球温暖化の影響

出所 横浜市温暖化対策統括本部、「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)の取組と今後の展開について」、2017年9月

 ゲリラ豪雨の原因の背景にあるのは、地球温暖化による気温の上昇があるといわれている。また、横浜市の人口はこの60年で3.5倍も増えており、この人口の急増に伴ってCO2もいちじるしく増加しているという。

横浜市の温暖化対策実行計画とアクションプラン

〔1〕横浜市の温暖化対策実行計画(2014年3月改定)

 温室効果ガス(CO2)の削減を抑制するため、横浜市は温暖化対策実行計画注2を、平成23(2011)年3月に策定し、同年4月1日に公表した(図2)。図2では、CO2の排出量が2010年(黄緑色)は1,932万トンも排出されており、人口も2020年までは増え続けと予測されている。

 このことから国の目標注3を考慮すると、2020年で16%、2030年で24%、2050年で80%まで削減しないと目標に到達しない。

図2 横浜市地球温暖化対策の実行計画 : 短期・中期・長期目標

図2 横浜市地球温暖化対策の実行計画 : 短期・中期・長期目標

出所 横浜市温暖化対策統括本部、「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)の取組と今後の展開について」、2017年9月

〔2〕横浜市エネルギーアクションプランの策定

 横浜市は、具体的な実行計画を着実に推進するためのプランとして、「横浜市エネルギーアクションプラン」を、平成27(2015)年3月に策定した(図3)。これは、図2に示した実行計画の目標に基づくものとなっており、図3に示した「エネルギーマネージメント」「再エネ」「水素」「省エネ」「まちづくり」の5つアクションプランのうち、「エネルギーマネージメントの展開」がYSCPの最も中心的なポイントとなっている。

図3 横浜市エネルギーアクションプラン〔平成27(2015)年3月策定〕

図3 横浜市エネルギーアクションプラン〔平成27(2015)年3月策定〕

CASBEE:Comprehensive Assessment System for Building Environmental Efficienty、建築物総合環境性能評価システム。国土交通省支援のもとに、一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構(IBEC)が開発したシステム
出所 横浜市温暖化対策統括本部。「横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)の取組と今後の展開について」、2017年9月


▼ 注1
降水量(雨が降る量)の単位はミリ/時間(mm/h)で表される(雪やあられ、ひょうも含む単位)。1時間の降水量が40〜50ミリということは、店舗の浸水や家屋の床下浸水、マンホールからの水の噴き出しなどが発生する高いレベルである(道路が大規模に冠水するレベルともいわれる)。

▼ 注2
平成23(2011年)年4月1日に策定された、横浜市地球温暖化対策実行計画:平成22(2010)〜平成25(2013)年度の改定版。

▼ 注3
日本の目標:パリ協定(COP21)で規定された世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃以下に抑える(できれば1.5℃に抑える)ことに対応するため、日本の中期目標として、2030年度までに2013年度比で26%、長期目標として2050年度までに80%の温室効果ガス(CO2)の排出削減を目指す。

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