東日本大震災からの福島県浜通りの地域経済の復興の一環として、2011年度からスタートした「福島沖での浮体式洋上風力発電システの実証研究事業」〔平成23(2011)年度〜平成30(2018)年度)」が最終年度を迎え、2018年8月24日、同事業を総括し整理した報告書を発表した。同事業は、福島洋上風力コンソーシアムが委託を受けて、福島県沖合約20kmの海上で実施されてきた(写真)ものだが、得られた成果を客観的に総括することを目的に、同コンソーシアムとは独立した立場で組織された総括委員会で評価され、報告書として公表した。
写真 福島洋上風力コンソーシアムによる実証研究
実証研究事業では、①浮体式初の複数基によるウィンドファームの実証、②世界最大級の風車(7MW)の浮体への搭載と実証海域への設置、③浮体式の洋上変電所の設置など、3つの世界初の取り組みに、国際的に見ても画期的な実証研究事業である。
表に、実証研究事業の風車の概要を示すが、2MW、5MW、7MWの3基(計14MW)の風車に加えて、洋上変電所1基の合計4基を設置して実証研究された。検証結果では、浮体式洋上風力発電システム全体の安全性、信頼性、経済性については、初期の目的を達成していると結論づけられている。
表 実証研究事業の風車の概要
今回の実証研究事業は、日本にとっては浮体式洋上風力発電が再生可能エネルギーの主力電源化に向けて重要な成果を上げているところから、今後、これらをもとにしたビジネスモデルなどを確立し、福島沖だけでなく日本市場への導入を促進するとともに、海外市場への輸出拡大に向けた積極的な展開が期待されている(関連記事:本誌今月号特集記事を参照)。