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【MWC19 Barcelonaレポート】5Gの真価はIoT/M2Mで発揮される!

― 産業ロボット/工場の無線化による巨大市場創出への期待 ―
2019/04/03
(水)
杉沼 浩司 日本大学生産工学部 講師(非常勤)・映像新聞 論説委員

5Gで変わるIoT

〔1〕5Gによって実現できる双方の情報伝達

 これまで、IoTというと「センサーから入った情報を処理して活用する」といった「センサー+情報処理」の話題が多かった。無線技術はセンサーとの通信を確保するためのものだ。

 しかし、5Gでは、センサーからの入力の処理に加えて、遠隔地に置かれた機器の操作も行えるようになる。5Gがもつ低遅延性や高信頼性により初めて無線通信による機器操作が一般のものとなる。こうして「IoTとはセンサーからの入力」といった片方向の情報伝達から「センサーから入力して情報処理し、機器を操作する」という双方向の情報伝達に変わる(写真8)。

写真8 低遅延性を活かしてロボットの制御信号を送る例(エリクソン)

写真8 低遅延性を活かしてロボットの制御信号を送る例(エリクソン)

ロボット搭載のセンサー情報を5Gでエッジサーバに送り、アクチュエータの移動量を算出する。結果は5Gでロボットに送られる。
出所 筆者撮影

 双方向化することで、従来は自動で処理できなかったものが自動化可能となる。高価な専用線を必要としていたものが、廉価な通信回線で可能となることも期待できる。IoTの質、量の両面で大きく変化が生じるだろう。

〔2〕工場の無線化

 次は無線化、遠隔化、双方向化が可能なことを前提に、現行のプロセスを変えるのが、大きな、そして意味のある仕事となる。

 今回、工場の無線化は、エリクソン、ノキアそしてクアルコムが他社との協業により技術開発を行っていることが明らかになった(写真9)。奇しくも3社ともが目を向けているのは「生産ラインの迅速な変更による、柔軟性の高い生産体制」つまり工場の革新である。ただし、ここで言われている柔軟性の高い生産体制の構築方法には定式がない。

写真9 工場を無線化した未来工場の構想を明かすボッシュのアンドレアス・ミュラー氏

写真9 工場を無線化した未来工場の構想を明かすボッシュのアンドレアス・ミュラー氏

機器メーカー各社は、工場の無線化に向けて共同研究を推進している。クアルコムはボッシュ(ドイツ)と提携して、必要な技術習得を目指す。講演したミュラー氏は、動力系を含めた野心的な構想を発表した。
出所 筆者撮影

写真10 電池駆動の無線化ロボットを展示したスイス・ABB(写真はエリクソンブース)

写真10 電池駆動の無線化ロボットを展示したスイス・ABB(写真はエリクソンブース)

ABBとエリクソンは、5Gで無線操作するロボットが、従来は無理だった場所にやってきて、人間と一緒に作業できる可能性を示した。これまでは、産業用ロボットは人間と完全に隔離して使うことが求められていた。
出所 筆者撮影

 3社は、産業用ロボットが無線化し、工場内を移動する構想を示している(写真10)。 次は、ロボットの移動が、生産に与える影響を示すことが求められる。また、現在の産業用ロボットは、人員の安全のために、人間に近づくことが許されていない(安全基準でそのように決められている)。ロボットが工場内を動き回るとき、人間の安全を確保し、いかにして人間との距離を保つのかといった課題も新たに考える必要が出てくる。

〔3〕産業用ロボットの無線化で期待できる分野

 今回、通信各社からの提案にはなかったが、産業用ロボットの無線化で期待できる分野の1つに、土木建築分野がある。スイスの連邦工科大学チューリッヒ校(ETH)では、ロボットによる建築作業が研究されている。電池化を含めたロボットの無線化は、可動範囲を大きく拡げ、ロボット建築の実現性を高めるだろう。

 ほかにも、センサーを動かして情報を集めることが求められる分野には、そのためのロボットを投入することが考えられる。マルチコプター・ドローンによる構造物の調査が話題になっているが、「よじ登る」タイプのロボットならば、対象物に直接センサーを当ててチェックできる。遠隔のカメラ映像とは、異なる種類の情報を取得することが可能だ。

 無線化は、ロボット1つとっても大きな変革をもたらす。ロボットを利用した製造ラインとなれば、より大きな影響が期待できる。今後、5G無線技術を使って製造現場を作り出すことに関する研究開発、そして製品が大いに注目されそうだ。

産業向けIoTに変革が起こる

 MWC19 Barcelonaでは、通信機器業界が産業向けIoTに向けてこれまで以上に真剣に取り組んでいることが明らかになった。推進力となるのは、5Gの自営網だ。5G自営網を用意し、遠隔操縦やIoTの徹底を図る。効率化と知能化(AI)を同時に実現した設備の要素技術が揃い始めた。センサーとアクチュエータが存在する世界のすべてにこの変革が波及する。

 次は、どのような変革を行うかの企画と計画が重要となる。関係する各社は、5G時代の自社の姿を今から考えておくべきだろう。

Profile

杉沼 浩司(すぎぬま こうじ)

日本大学生産工学部 講師
(非常勤)・映像新聞 論説委員

1985年 CGプロダクションであるアニメーションKABを設立、1987年 電気通信大学大学院計算機科学専攻修士課程修了、1998年 カリフォルニア大学アーバイン校博士課程修了(Ph.D. in Electrical and Computer Engineering)。1998~ 2009年 ソニー(株)にて画像圧縮、衛星通信、知的情報システム、テレビ用半導体などの研究開発を担当。2009~ 映像新聞論説委員、2011年~ 日本大学生産工学部講師(非常勤)・同校自動車工学リサーチセンター客員研究員。計算機アーキテクチャと通信を主たる研究領域とし、自動運転、ドローン自動操縦などに研究領域を拡げている。

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