[特集]

卒FITと再エネ主電力化に向けた新ビジネスの到来

― 日本版コネクト&マネージも一部実施へ ―
2019/04/03
(水)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

RE100に大きなビジネスチャンス

〔1〕日本から17社が加盟

 一方、世界では、2014年9月に再エネによるエネルギーの100%調達を目指す組織「RE100」(Renewwable Energy 100)が発足し、イケア、BMWグループ、コカ・コーラ、フェイスブック、マイクロソフト、ナイキ、アップル、スターバックスなどのグローバル企業167社(2019年3月25日現在)が加盟して、急速に会員を増やしている(後出の再エネ100%を実現・推進している事例を参照)。

 日本からは、表1に示すようにRE100加盟総数の10%を超える17社が加盟しており、今後も増加すると見られている。

 このように、脱炭素化社会の実現を目指して、再エネを導入することはもはや国際的なビジネスの基盤となってきており、再エネ導入に積極的でない企業は、国際的ビジネスサプライチェーンに参加できない状況ともなってきている。

表1 日本のRE100への加盟企業と再エネの導入目標〔番号はRE100への加盟順(2019年3月25日現在)〕

表1 日本のRE100への加盟企業と再エネの導入目標〔番号はRE100への加盟順(2019年3月25日現在)〕

出所 http://www.datsutanso.jp/14876691304429

〔2〕RE100の新市場とビジネスチャンス

 一方、卒FITに備えて、RE100の新市場が活発化してきた。前述したように、今後2023年までに累積で165万件、太陽光発電設備容量は2023年までに累積で670万kWに達するため、これをターゲットにしたビジネスが活発化しようとしている。

 さらに、RE100加盟企業と一般家庭間のビジネス、およびRE100加盟社同士での連携ビジネス、さらに従来は競合相手であった旧10電力会社と新電力の連携したビジネスなどの動きが、すでに活発化し、連日のように報道されるようになってきた(例:東京電力エナジーパートナーとイーレックスによる新会社「エバーグリーン・マーケティング」の設立など)。

再エネ大量導入を支える次世代電力ネットワークの構築

〔1〕再エネ由来電力の大量送電と系統制約

 これまで述べてきたように、今後再エネビジネスが活発化し、電力ネットワークに再エネ由来の電力を大量に送り、再エネ比率を上げていく場合に、系統の電力ネットワーク(送電線)の系統容量には上限があるため、無制限に再エネを送電することはできない。

 また、2018年10月には、九州エリアにおいて初めてとなる再エネの出力制御が行われたが、これを通して、今後、再エネの大量導入が進んだ場合に、このような系統制約が発生しないよう、より柔軟な系統運用が求められるようになった。

〔2〕日本版コネクト&マネージ

(1)日本版コネクト&マネージの検討

 そこで、現在、既存の電力系統(電力ネットワーク)を最大限に活用することを目指す新しい系統運用のルールである日本版コネクト&マネージ(Connect & Manage)が検討されている。

 図9左の図が従来の電力ネットワークの運用方法で、同右が、日本版コネクト&マネージによる見直しの方向性である。再エネ大量導入委員会では、欧米の事例を参考にしながら、日本版コネクト&マネージの検討が進められ、図9上の表に示すように一部実施されるようになってきた。

 ここで、コネクト&マネージとは、まず再エネを電力系統に接続する(コネクトする)ことを優先させ、電力ネットワークの中を通る電力の流れ(潮流)の混み具合によって、再エネの送電容量を制限する(マネージする)という考えである。同委員会では、「日本版」として、「想定潮流の合理化」「N-1電制」「ノンファーム型接続」の3つの手法に整理し、段階的に導入を進めている。

(2)日本版の3つの手法

 3つの手法を概略的に説明すると次のようになる。

  1. 想定潮流の合理化:従来の電力系統では、電源(発電所)がすべてフルに稼働していることを想定して送電線の空き容量が算定されているが、実際はいつもフル稼働しているわけでないので、これを合理的に効率よく使用して、再エネのための空き容量を増やす方法。
  2. N-1電制:現在送電線の2回線のうち1回線が故障(これをN-1故障という)しても、もう一方の回線で送れるよう、1回線分(すなわち50%分)は予備として確保されている。この予備回線を再エネに開放し、送電線の最大容量まで再エネの接続を認める方法(ただし緊急時には瞬時に遮断することが条件となっている)。
  3. ノンファーム(Non-Firm)接続:接続可能な再エネの容量を決めず、電力系統の空きがある場合には、再エネを送電できる方式。N-1電制は緊急時には瞬時に遮断することが条件であるが、ノンファームの場合は、平常時でも電力系統が混雑していれば再エネの出力を抑制することもある。

 それぞれまだ検討課題はあるが、図9上の表の右側に示すように、すでに、2018年時点で一部が実施され、効果を上げている。

 このような再エネ大量導入委員会で検討された内容は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が具体策を検討することになっている。

 再エネの大量導入時代に向けて、まだ検討すべき課題は多々あるが、ここでは脱炭素化社会の実現を目指して、日本や世界の再エネの導入状況や、日本の次世代電力ネットワークについて概観した。

 日本が、一刻も早く再エネ導入のリーダー的存在になることを期待したい。


▼ 注5
第5次エネルギー基本計画:本計画では、エネルギーの「3E+S」の原則をさらに発展させ、より高度な「3E+S」を目指すため、4つの目標を掲げている。①安全の革新を図ること、②資源自給率に加え、技術自給率とエネルギー選択の多様性を確保すること、③脱炭素化への挑戦、④コストの抑制に加えて日本の産業競争力の強化につなげること

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