V2Gアグリゲーター事業の展開
ここでは、2018年度におけるVPP構築実証事業のうち、V2Gアグリゲーター事業(B-2事業)について、概略を紹介する注11。
2018年度のV2Gアグリゲーター事業では、図4に示すように、EV充放電器(EVPS:EV Power Station)を設置(今回の実証では、EV1台に充放電器1台を設置)した実環境を構築し、次のような実証事業が行われた。
- 複数台の電動車(EV/PHEV)を束ねるV2G(Vehicle to Grid)制御システムの開発
- EV充放電器を系統と連携させて電力の需給調整用途として活用する技術の開発
- 今後、急速な普及が予測されている電動車のSOC注12などを含む電池情報管理技術の構築
図4 V2Gアグリゲーター事業実証の仕組み(イメージ)
出所 九州電力プレスリリース、2018年5月31日をもとに編集部で作成
V2Gグリゲーター事業の進捗状況
表6は、2018年度からスタートした4つのV2G事業アグリゲーター事業(表5参照)に関する全体の進捗状況である。
表6 V2G事業アグリゲーター事業の進捗状況
※1:V1G、V2G:V1Gは系統側からEVへの単一方向の電気の流れを、V2GはEVと系統間の双方向の電気の流れを示す。
※2:電源Ⅰ(でんげんイチ):一般送配電事業者があらかじめ確保する調整力のこと。
電源Ⅰ-a(でんげんイチエー):周波数制御や電力の需給バランス調整に活用できる電源等(周波数調整機能をもつ電源。すなわち、周波数調整のために、瞬時に変動する需要に追随して、短時間(数秒程度)で出力調整できる電源のこと。
AC:Aggregation Coordinator、アグリゲーションコーディネーター
RA:Resource Aggregator、リソースアグリゲーター
出所 一般社団法人環境共創イニシアチブ「2018年度 需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金 成果報告」、 2019年3月19日
また、具体的な電動車の導入台数は、表7に示すように、
- 九州電力プロジェクトは、5台
- 東京電力ホールディングスプロジェクトは、17台
- 豊田通商プロジェクトは、2台
- 東北電力プロジェクトは、2台
など、電動車が計26台導入された。さらに、VPP環境における電動車の制御リソース量の合計(充放電器の定格出力の合計)は、154kW程度となった(表7)。
表7 V2G実証事業に導入された各プロジェクトの電動車
出所 取材および各資料等をもとに編集部で作成
次に、表6に示した、九州電力プロジェクトと東北電力プロジェクトのV2G実証事業の概要を紹介しよう。
▼ 注11
VPP構築実証事業の全体的な流れについては、本誌2018年12月号(前編)と2019年1月号(後編)を参照。また、表5に示す各URLをクリックすると、報告の内容を見ることができる。
▼ 注12
SOC:State Of Charge、電池の充電率。蓄電池が完全充電された状態から、放電した電気量を除いた残りの割合(残容量)のこと。これによって、その蓄電池に、あとどのくらいの電気が充電できるかなどがわかる。
SOC=残容量〔Ah〕÷満充電容量〔Ah〕×100〔%〕
※単位[Ah:Ampere hour]は、電池に蓄えられた電荷の量を示す。例えば1Ahとは、1Aの電流で1時間流した場合の電荷量となる。