[特集]

V2Gを実証した2018年度のVPP構築実証事業の成果

― 緊密化する卒FIT・EV/PHEV・蓄電池・ブロックチェーンの関係 ―
2019/05/01
(水)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

2018年度のVPP実証事業の成果

 ここまで、今後「エネルギーの社会インフラ」(分散エネルギーリソース)になると見られている電動車について、日本および世界の流れを見てきた。次に、電動車も含む需要家側の分散エネルギーを統合して利用するVPPについて、このほど公開されたVPP構築実証事業の概要を紹介しよう。なお、表3にVPPに関する関連用語をまとめて解説しているので参考にしていただきたい。

表3 VPPに関する関連用語の解説

表3 VPPに関する関連用語の解説

調整力Ⅰ´(アイ・ダッシュ):主に真夏の猛暑時等の電力の需給逼迫時に、需給バランス調達に活用できる電源(厳気象対応調整力)等(周波数調整機能をもたない電源)。
出所 各種資料をもとに編集部で作成(下記は参考URL)
http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/term.html
https://www.occto.or.jp/iinkai/chouseiryoku/jukyuchousei/2018/files/jukyu_shijyo_07_03.pdf

〔1〕VPPの目標と2018年度のVPP構築実証事業

 VPP(Virtual Power Plant、仮想発電所)とは、工場や家庭などの需要者側にある蓄電池や発電設備、電動車、エネファームやデマンドレスポンス(DR)などの分散しているエネルギーリソース(エネルギー資源)を、IoTを使用して遠隔から統合制御することによって、あたかも1つの発電所のように機能させる仕組みである。これを電力の需給調整に活用できるようにするVPP構築実証事業が2016年度からスタートした。

 VPP構築実証事業の目標は、5カ年の事業を通じて、50MW以上のVPPの制御技術を確立することであり、これを通して、再エネの普及拡大や電動車の普及、さらに省エネルギーや電力の負荷平準化などを推進してく計画となっている。

 VPP構築実証事業は5カ年計画(2016年度〜2020年度)として推進されており、2019年度を迎えて4年目に突入した。すでに140億円強(2019年度補助金を含む)注7を投入してきた実証事業だけに大きな期待が寄せられている。

〔2〕VPP事業全体の成果の公開内容

 また、表4に示すように、2018年度(2018年4月〜2019年3月)のVPP構築実証事業からは、脱炭素化社会に向けて新たにV2G注8実証事業(V2Gアグリゲーター事業)が追加された。これによって、電動車を活用したV2G実証を行い、V2G構築に向けて技術的な実証や制度的な課題の抽出が行われている。

表4 2018年度の需要家側エネルギーリソースを活用したVPP構築実証事業費補助金(4つの事業による分類)

表4 2018年度の需要家側エネルギーリソースを活用したVPP構築実証事業費補助金(4つの事業による分類)

V2G:Vehicle to Grid、EV(電気自動車)から電力系統へ 電気を供給すること PCS:Power Conditioning Subsystem、直流-交流交換装置
EMS:Energy Management System、エネルギー管理システム EVPS:EV Power Station、電気⾃動⾞充電設備
出所 https://sii.or.jp/vpp30/uploads/H30VPP_kouboyouryou.pdfをもとに編集部で作成

 2018年度全体のVPP構築実証事業の成果については、2019年3月25日にSII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)注9から報告書が公開された(表5)。

表5 平成30(2018)年度「需要家側エネルギーリソースを活用したVPP構築実証事業」成果の公開内容〔平成31(2019)年3月25日〕

表5 平成30(2018)年度「需要家側エネルギーリソースを活用したVPP構築実証事業」成果の公開内容〔平成31(2019)年3月25日〕

出所 平成30(2018)年度「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金」(VPP)成果報告会、平成31(2019)年3月25日

 これらのVPP構築実証事業を通して、再エネの主力電源化の時代に向けてVPPは有効なのか、新たな調整力注10となるのか、その展開に向けた法的なあるいは制度的な課題は何なのか、などについて、VPPへの期待とともに論議されている。


▼ 注7
VPP構築実証事業の補助金:2016年度:29.5億円、2017年度40億円、2018年度:41億円、2019年度30億円の計140.5億円。

▼ 注8
V2G:Vehicle to Grid、電動車(EV/PHEV)を電力系統(Grid)に接続し、充電したり放電したりする技術(充放電技術)。

▼ 注9
SII:Sustainable open Innovation Initiative、一般社団法人環境共創イニシアチブ。
なお、VPP構築実証事業の詳細については、本誌2018年12月号(前編)と2019年1月号(後編)を参照。

▼ 注10
調整力:一般送配電事業者の指令に基づいて、そのエリア内の電力の需要と供給のバランスを調整する電力のこと(例えば真夏日などの電力ピーク時でも、電力の需要と供給を一致させる必要がある)。その調整のために利用される各エネルギーリソース(住宅やビルなどの需要家側に設置されている太陽光発電、蓄電池、電気自動車、ヒートポンプ、給湯器(エコキュート)など)は、束ねられて「調整力」となる。現状では、公募によって調達される。その一例が、デマンドレスポンス(DR:Demand Response、電力の需要側応答)と呼ばれる仕組みである。現在は、電力消費のピーク時の電力の需給調整は、火力発電所などの出力を増大させたり減少させたりして調整している。

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