再エネ利用の課題にどう対処するか
─編集部 ソニーのRE100目標達成にあたっての課題は何でしょうか。
佐藤 半導体工場の電力消費です。半導体工場ではクリーンルームが24時間稼働しており、その温度や湿度の管理に大量の電力を必要とします。ソニーグループが年間に排出するCO2の約80%が日本におけるもので、そのうちの8割が半導体工場からのものです。もちろん、対策は行っています。工場内の製造装置が発する熱を再利用して、空調のためのエネルギー効率を約2倍向上させたり、空調の新システム導入によりCO2排出量を以前のシステムに比べ約67パーセント削減するなどの対策を行っています。これらによりウェハー製造にかかるエネルギー消費量は1枚単位では削減していますが、生産量が増えるとエネルギー消費の総量も増えます。
また使用する電力を今後、再エネでいかに賄っていくかが大きな課題となっています。しかし、24時間稼働の工場ですので安定した電力供給が欠かせず、またより低コストでの調達も求められますが、現在の日本において再エネを利用するには、供給量やコストの面でハードルが高いと言わざるを得ません。悩ましい問題です。
─編集部 解決のために、どのような施策をお考えでしょうか。
佐藤 日本でももっとリーズナブルなコストで、潤沢に再エネを利用できるようにしたい。欧州ではすでに利用しやすい環境が整っており、同様の環境整備を日本でも進める必要があります。しかし、私たちだけでそれを進めることは限界があり、そこでRE100に加盟しました。RE100のような大規模のイニシアチブに加わることで、国や電力会社ともさらなるパイプができ、もっと突っ込んだ対話もきるようになるでしょう。企業とも連携が進み、それによって再エネ市場が活性化し、利用拡大も促進されるはずです。こうした活動が、結果的にRE100達成につながっていくと信じています。
脱炭素社会に向けて
─編集部 RE100の実現を目指して、今後の展望をお聞かせください。
佐藤 現在、GM2020を展開していますが、それも終盤を迎え、おおよその結果と次の課題が次第に見え始めています。それらをもとに次のGM2025に向けた環境中期目標をいま練っているところです。今年度中に目標を策定し、2020年度には次期計画を発表するべく動いています。
冒頭にもご説明した通り、環境保全に関してソニーはいち早く取り組み、さらにRoad to Zeroの宣言やRE100の目標を立てて、さまざまな活動を行っています。そして私たちには、それらを達成する責任があり、そのためにも今後いっそう環境活動に積極的に関わっていきたいと考えています。
目標達成には、まず再エネ市場の活性化とそれによる供給量増加が欠かせません。そのために弊社はRE100に加盟しましたが、こうした活動が他の企業様にも広がっていくことを願っています。そうすることによって需要が広がりますし、それが供給増とコストダウンにつながり、RE100が目指す脱炭素社会の未来が拓けていくはずです。