東急の2050年を見据えた長期経営構想
〔1〕2019年10月にRE100に加盟
―編集部 東急グループは、国内初となる鉄軌道事業を含む企業グループとして、2019年10月にRE100に加盟されています(表2)。また、交通インフラ事業では、2020年9月から1年間、最新の省エネ型の車両を使用し、100%再エネ由来の電力で「SDGsトレイン」を運行するなど、インパクトの強い施策を推進されていますね。
山成 最初に、当社について簡単に説明します。当社は表1に示すように、1922年9月2日に設立し、来年の2022年で創立100周年を迎えます。
表1 東急のプロフィール(敬称略)
出所 右を参考に編集部で作成、https://www.tokyu.co.jp/company/outline/
表2 東急のRE100加盟状況と世界の加盟状況(2021年4月現在)
RE100:100%Renewable Energy、事業で使用する電力を100%再エネで賄うことを目指す国際連合。2014年設立。TCG(The Climate Group、クライメートグループ)がCDP(炭素開示プロジェクト)とのパートナーシップのもとで主催している。
出所 各種資料をベースに編集部で作成
https://www.tokyu.co.jp/ir/upload_file/m002-m002_05/2020-FACTBOOK_20200626_01_j-ALL.pdf
https://www.tokyu.co.jp/ir/upload_file/m002-m002_11/Tokyu_Integratedreport_2020.pdf
当社は、これまで公共交通の整備(鉄道事業)と住宅地の開発(都市開発事業)を両輪として発展してきましたが、2019年9月2日に、グループスローガン「美しい時代へ―東急グループ」のもとに、長期経営構想を発表しました注1(図1)。この長期経営構想は、2030年に向けての経営スタイルや東急線沿線のエリア戦略・事業戦略などを示しながら、2050年を見据えて、東急ならではの社会価値提供による“世界が憧れる街づくり”の実現を掲げています。
図1 東急における長期経営構想(2019年9月2日策定)の位置づけ
―編集部 長期経営構想では、どのような戦略を推進しているのでしょうか。
山成 当社は、図1に示すグループスローガンのもとに、サステナブル経営(後述)を基本に据え、2050年を見据えた長期経営構想を位置づけ推進しています。この長期経営構想を背景に、当面2030年に向けた成長戦略を策定し、
- 東急線沿線(渋谷・多摩田園都市・沿線重点エリア)および沿線外(国内・海外)に関するエリア戦略と、
- 交通インフラ事業、都市開発事業、生活創造・リテール事業、ホスピタリティ事業の4つの事業戦略を組み合わせ、
社会課題の解決と事業成長の両立を目指しています。
これらの成長戦略は、当社を中核として、図2に示す連結対象となる子会社137社で構成されている当社グループ全体で推進されています(2020年3月31日現在)。
図2 東急の事業分野と主な子会社および関連会社の概要
〔2〕東急のサステナブル経営とは?
―編集部 東急のサステナブル経営とは、どのような取り組みでしょうか。
山成 当社では、多様な事業領域をもつ当社だからこそ、多岐にわたるサステナブル重要テーマに関連するSDGs注2にも、積極的に取り組んでいます。
長期経営構想では、「安全・安心」「まちづくり」「生活環境品質」「ひとづくり」「低炭素・循環型社会」注3、「企業統治・コンプライアンス」の6つの重要テーマを基本方針とし、図3に示す各重要テーマに関する「2030年に向けて目指す姿」を定め、推進しています。
図3 東急のサステナブル重要テーマごとの目指す姿
▼ 注1
東急「長期経営構想〜未来に向けた美しい生活環境の創造〜」、2019年9月2日
▼ 注2
SDGs:Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標。2015年9月(2015年12月のパリ協定締結の3カ月前)に、世界193の加盟国によって全会一致で採択された国際目標。社会が抱える問題(気候変動や貧富の格差、ジェンダー平等、などの幅広い課題)を解決し、2030年を目指して明るい未来を作るための17の目標(ゴール)と169のターゲットで構成される。https://www.env.go.jp/policy/sdgs/guides/SDGsguide-honpen_ver2.pdf
▼ 注3
循環型社会:廃棄物等の発生を可能な限り抑制し、廃棄物等のうち有用なものを循環資源として再利用することによって天然資源の消費を抑え、環境への負荷を低減する社会のこと。