[直流時代の到来!]

直流時代の到来!<後編> その1 ドイツ アーヘン工科大学に見る直流技術の研究開発

― AC配電網からDCマイクログリッドへの転換 ―
2019/08/09
(金)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

アーヘン工科大学のキャンパスクラスタ群

〔1〕キャンパスクラスタ群の構成

 アーヘン工科大学は、工科大学としては、欧州全体でも最大級の規模で、表1に示すように、約4万5,000人の学生(約60%が工学部の学生)がおり、教授陣は550名、研究員は約5,500名ほどである。デ・ドンカー教授は、アーヘン工科大学のキャンパスクラスタのトップを務め、リーダーシップを発揮している。キャンパスクラスタとは、図2に示すような研究センターの集まりのことである。

表1 アーヘン工科大学のプロフィール

表1 アーヘン工科大学のプロフィール

出所 Prof. Dr. ir. Rik W. De Doncker「DC Technology - Key Enabling Technology for a CO2 Neutral Urban Environment」、2019年6月4日

図2 持続可能エネルギー業界パートナーとイノベーションを加速するアーヘン工科大学のキャンパスクラスタ

図2 持続可能エネルギー業界パートナーとイノベーションを加速するアーヘン工科大学のキャンパスクラスタ

Cluster Schwerlastantriebe:英語でHeavy Duty Drives Cluster、主に風力タービンと建設機械用の駆動系の研究開発クラスタ
出所 Prof. Dr. ir. Rik W. De Doncker「DC Technology - Key Enabling Technology for a CO2 Neutral Urban Environment」、2019年6月4日

 こうしたクラスタのもとで協力し合い、持続可能なエネルギーに関して、大きな目的をもって問題解決をしようとしている。

 図2の右下に示す、「RWTHAACHEN CAMPUS+Sustainable Energyクラスタ」(SEクラスタ)は、アーヘン工科大学と各センター〔CARL、ISEA、E.ON ERC(エネルギー研究センター)、FEN(Flexible Electrical Networks)研究キャンパスプロジェクト〕とのゲートウェイとなっている。デ・ドンカー教授は、このE.ONエネルギー研究センター(E.ON ERC注4)でも所長を務めている。表2に、図2の用語解説を示す。

表2 図2に示す用語の解説

表2 図2に示す用語の解説

出所 各種資料をもとに編集部で作成

〔2〕キャンパスクラスタ:3つの大きなポイント

 図2に示すキャンパスクラスタには、3つの大きなポイントがある。

 第1は、E.ONエネルギー研究センターがあり、第2は、大学関係と産業界から21社注5が参加している産学共同によるFEN(Flexible Electrical Networks、フレキシブルな電力網)という研究キャンパスプロジェクトがある点だ。

 第3は、2019年末に完成するCARL(表2参照)で、こちらは電気化学とパワーエレクトロニクスシステムに関する寿命・信頼性・ライフサイクルの分析研究センターである。このほか、CWD(風力発電研究センター)やCMP(モバイル推進研究)などもある。


▼ 注4
E.ON(エーオン):ドイツ・エッセンに本社を置く再エネを推進する大手の電力・ガス会社。電力およびガスの顧客数:2,100万世帯、電力網(グリッド):85万2,000km、再エネによる電力:150億kWh(2019年6月時点)。

▼ 注5
https://translate.google.co.jp/translate?hl=ja&sl=de&u=https://fenaachen...

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