[特別レポート]

ヤンマーの脱炭素化へ向けたエネルギーソリューション事業

― バイオマス発電などで5年後に100億円規模のビジネスへ ―
2019/09/11
(水)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

ヤンマー株式会社(以下、ヤンマー)のグループ会社であるヤンマーエネルギーシステム〔以下、ヤンマー(YES)〕株式会社は、パリ協定やSDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けて、従来の省エネ機器の販売に加え、顧客のエネルギー課題の解決に向けた新たな組織体制を構築し、「創エネ」「再エネ」「熱電」を核とするエネルギーソリューション事業を開始。5年後に100億円規模のビジネスを目指す。
ヤンマーは、創業100年目を迎えた2012年に、今後100年継続・存続する会社を目指し、資源循環型社会に向けた“A SUSTAINABLE FUTURE ”(テクノロジーで、新しい豊かさへ)という企業活動の指針を発表している。同グループ全体で、食料の生産とエネルギー変換の2分野をターゲットにして顧客の課題を解決し、さらに「都市」「大地」「海」の3つのフィールドでビジネスを展開していく。

積極的な海外ビジネスを展開

 ヤンマーは、広く知られているように、これまで小型ディーゼルエンジン事業を核に、小型エンジンを搭載したトラクターなどのアグリ事業(農業事業)やマリン事業(舶用システム事業)、建機事業(土木・建築工事に使用される機械事業)をはじめ、クラッチ(動力伝達装置)などのコンポーネント事業などを展開してきた。

 このような背景のもと、2003年に設立されたヤンマー(YES)は、発電事業と空調事業(ガスエンジンによるヒートポンプ)の2つの柱を軸に、国内を中心にビジネスを推進してきた(表1)。

表1 ヤンマーエネルギーシステム株式会社のプロフィール(敬称略)

表1 ヤンマーエネルギーシステム株式会社のプロフィール(敬称略)

出所 ヤンマーエネルギーソリューション事業説明会資料(2019年8月8日)をもとに編集部で作成

 また近年、国際的なエネルギー市場の活性化が進展する中で、海外のエネルギー市場の拡大を目指して、

  1. 2015年4月:スペインのヒモインサ(HIMOINSA)注1
  2. 2015年12月:ドイツのRME注2
  3. 2019年3月:ドイツのKKUグループ注3

を傘下に収めるなど、海外ビジネスを加速させている。

国内では3つのビジネスでSDGsを推進

 国内のビジネスに目を向けると、ヤンマー(YES)は図1に示すように、

  1. 発電と廃熱を有効利用する「コージェネレーションシステム」注4
  2. 社会インフラ/BCP(事業継続計画)対策として重要な「非常用電源」
  3. 再生可能エネルギー(再エネ)を拡大する「バイオガス・BDF」(バイオディーゼル燃料)

を中心にビジネスを展開し、世界的な取り組みとなっているSDGsの達成を目指して、全社的な取り組みを強化している。

図1 ヤンマー(YES)のSDGsを推進する国内ビジネス

図1 ヤンマー(YES)のSDGsを推進する国内ビジネス

BDF:Bio Diesel Fuel、バイオディーゼル燃料
SDGsの17の目標(ゴール)のうち、ヤンマー(YES)では、【目標7】:クリーンなエネルギー、【目標8】:働きがいも経済成長も、【目標9】:産業と技術革新の基盤づくり、
【目標11】:住み続けられるまちづくり、【目標13】:気候変動対策、【目標17】:パートナーシップで目標達成、という6個の目標の実現が関連している。
出所 ヤンマーエネルギーソリューション事業説明会資料(2019年8月8日)

ヤンマー(YES)のエネルギーソリューション事業

 ヤンマー(YES)のエネルギーソリューション事業を具体的に見てみよう。

 図2は、同社のエネルギーソリューション事業の展開を示したものである。同事業は、5年後に100億円規模のビジネスに拡大させることを目標にしている。

 この目標を実現するため、図2と表2に示すように、3つのソリューションが定義された。

  1. 創エネソリューション:エネルギーをかしこく創る。すなわち、天然ガスや石油などのエネルギーを高効率に変換し、電力や熱を創る。
  2. 再エネソリューション:今まで廃棄していたバイオガスや廃食油、食品残渣、もみ殻(もみがら)をエネルギー変換し、電力や熱を創る。
  3. 熱電ソリューション:(1)(2)で創られたエネルギーを、ヤンマーのエネルギー管理システム(Y-EMS)や未利用熱を活用して最適制御することによって、無駄のない省エネシステムを実現する。

図2 ヤンマー(YES)の3つのエネルギーソリューション事業

図2 ヤンマー(YES)の3つのエネルギーソリューション事業

出所 ヤンマーエネルギーソリューション事業説明会資料(2019年8月8日)

表2 ヤンマー(YES)が推進する創エネ・再エネ・熱電ソリューション

表2 ヤンマー(YES)が推進する創エネ・再エネ・熱電ソリューション

GHP:Gas engine driven Heat Pump、ガスヒートポンプ方式。空調機による冷暖房は、冷媒をコンプレッサ(圧縮機)によって循環させることによって行われるが、GHPは圧縮機の駆動にガスエンジンを使用する方式。これに対し、圧縮機の駆動にモーターを使用する方式はEHP(Electric Heat Pump、電気式ヒートポンプ方式)と呼ばれる。GHPのほうが、電力消費量が少なく省エネが可能になる。
コージェネレーション:Cogeneration。天然ガスや石油、LPガス等を燃料として使用し、エンジンやタービン、燃料電池等の方式によって発電し、その際に生じる廃熱も同時に回収するシステムのこと。回収した廃熱は、工場における熱源や、家庭やオフィス等の生活の場における冷暖房、給湯設備などに利用できる。「コージェネ(コジェネ)」あるいは「熱電併給」と呼ばれる。
カーボンニュートラル:直訳すると「炭素中立」。植物由来の原料を燃やしても、排出されるCO2は植物の光合成で再び取り込まれるので、CO2の増減に影響を与えない状態のこと。
出所 ヤンマーエネルギーソリューション事業説明会資料(2019年8月8日)をもとに編集部で作成

 これらのソリューションを提供する場合、ヤンマー(YES)は、メーカーとして単に機器の販売をするのではなく、トータルな観点で、施工や顧客課題に応じた改善策を提案し、省エネや省CO2、省コストを実現するなど、諸課題を解決していく。さらに、同ソリューションを通して、低炭素から脱炭素への実現を図り、室温効果ガスの排出量を低減させていくとしている。


▼ 注1
スペインのヒモインサ(HIMOINSA):欧州を中心にグローバルにオンサイト型発電システムと、そのトータルソリューションを提供する企業。
オンサイト型発電とは、事業活動を行う者が発電設備を自社(団体)が保有・管理する敷地内(オンサイト)へ設置し、事業活動や事業継続に必要なエネルギーを自給すること。通常は発電システムだけでなく、効率的な排熱利用を目的としたコージェネレーションシステムなどの導入も含む。
https://www.yanmar.com/jp/news/2015/04/27/1012.html

▼ 注2
ドイツのRME:ドイツのマイクロコージェネレーションシステム(マイクロコージェネ)の開発・製造・販売会社。その子会社RME/ENERGIEとマイクロコージェネの共同開発を行っている。
https://www.yanmar.com/jp/news/2015/11/26/1237.html

▼ 注3
ドイツのKKUグループ。ドイツ企業向けに空調・冷蔵機器の販売、エンジニアリング、施工、サービス、周辺機器の製造・販売を行っている。

▼ 注4
コージェネレーション(Cogeneration)。天然ガスや石油、LPガス等を燃料として使用し、エンジンやタービン、燃料電池等の方式によって発電し、その際に生じる廃熱も同時に回収するシステムのこと。回収した廃熱は、工場における熱源や、家庭やオフィス等の生活の場における冷暖房、給湯設備などに利用できる。「コージェネ(コジェネ)」または「熱電併給」とも呼ばれる。

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