変革する日本市場へのチャレンジ
〔1〕グローバルな脱炭素化に伴う再エネ利用の拡大
表2 再エネの拡大とともに成長するフレキシブルエネルギー市場
出所 オートグリッド社プレゼンテーション資料(原典:Bloomberg New Energy Finance)をもとに編集部作成
―編集部 日本市場のポテンシャルやその成長に関して、どのように分析されていますか。
Narayan 2015年のパリ協定注5合意によって、グローバルに脱炭素化が加速していく中で、日本でも再生可能エネルギー(以下、再エネ)の利用がますます高まるはずです。経済産業省は電力の安定供給を担保しつつ、料金の値下げや電力の選択肢を増やしていく、ビジネスを増やすなど、エネルギー市場を自由化する方向で改革を進めています。そのため、今後は、自己託送サービス注6や容量市場注7など、日本のエネルギー市場に大きな変革が起こります。
こうした構造変化に伴って、リアルタイムに、拡張性と柔軟性を備えた新しいエネルギー制御システムで管理することが必要となります。
世界の最新金融ニュースを扱うブルームバーグによると、2050年までに全体の15%がこのような再エネの制御システムを利用し、グローバルなフレキシブルエネルギー市場は1,600GWになると予測されています。その中で日本市場は82GWになると見込まれ、グローバルでトップ5に入るとされています(表2)。
〔2〕日本の蓄電池市場に期待
―編集部 どこに注目されているのでしょう。
Narayan この先、日本のエネルギー市場において伸長するのは4つの分野だと考えています。それは、小型蓄電池、大型蓄電池、DR、容量市場(ダイナミックプライシング)で(図2参照)、特に日本においては、EV(電気自動車の蓄電池)や蓄電池市場が大きく拡大していくと考えています。
図2 2050年に向けた日本市場の予測
出所 オートグリッド社プレゼンテーション資料より
蓄電池には、家庭用、商業用、産業用、団地用などのいろいろなタイプがあります。また、蓄電池は、団地やキャンパスにも設置されています。それらの小型蓄電池が今年以降、日本のフレキシブルエネルギー市場を牽引していくでしょう。というのは、来年だけでも1万〜2万個程度の追加が見込まれると試算されているからです。
さらにFITが終了し、その契約者約250万件のうち10%もしくは20%の契約者が蓄電池を購入することになれば、かなりの数の蓄電池が国内市場で設置されていくことになります。その際、拡張性と最適化に優れたオートグリッド社のプラットフォーム(後出の図3)の利用価値が高まると考えています。もちろん技術的にはかなり高いハードルであり、チャレンジングなことだとは思っています。
▼ 注5
パリ協定:フランス・パリで開催されたCOP21(第21回気候変動枠組条約締約国会議)で2015年12月に採択された協定。「世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して2℃未満に抑える(1.5℃に抑える必要性にも言及)」に向けて、世界全体で今世紀後半には、温室効果ガス排出量を実質的にゼロにしていく方向を打ち出した。
▼ 注6
自家用発電設備を設置する者が、その発電設備を用いて発電した電気を別の場所にある自分の電気設備に送電できるようにするサービス。2014年4月1日から利用可能になった。この制度の適用を受けられるのは、電力供給を受ける相手が同じ企業グループに属するなどの場合に限られる。
▼ 注7
電力量(kWh)ではなく、将来の供給力(kW)を取引する市場。発電所等の供給力を金銭価値化し多様な発電事業者等の市場参加を促すとともに、国全体で必要な供給力を確保することが目的。