[クローズアップ]

パリ協定やSDGsの実現を加速する新枠組み「再エネ100宣言 RE Action」がスタート

― 10GWh未満の中小規模の28団体とアンバサダー6団体が参加 ―
2019/11/01
(金)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

RE Actionは約1万団体をターゲット

〔1〕日本の消費電力量の20〜30%を占める

 日本の中小事業者や企業外の団体(自治体、教育・医療機関など)における電力需要の状況を見てみよう。

 現在、日本では、RE100加盟の対象とならない中小事業者、自治体、教育・医療機関など団体は、約400万団体に上ると見られ、それらの電力消費量は日本国内の40〜50%程度を占めるといわれている(後出の図4参照)。

 図3は、日本における業種別の電力量(2017年)の概要を示したものである。縦軸に業種を、横軸に消費電力量(GWh)/年を示している。図3の赤い棒グラフに示された飲食店や学校、医療、社会福祉・介護などが「RE100対象外が多い業種」を示しており、ここに約400万団体が存在している。

図3 RE100対象外の電力需要の多さを示す図(2017年の業種別消費電力量の例)

図3 RE100対象外の電力需要の多さを示す図(2017年の業種別消費電力量の例)

出所 記者発表会資料「再エネ100宣言 RE Actionの意義」、2019年10月9日

 図3に示した約400万団体のうち、消費電力量の20〜30%を占める約1万団体が、RE Actionに参加する可能性があると見ている。

〔2〕RE100とRE Actionの両輪で好循環を

 RE Actionは、約1万団体をターゲットにRE Actionへの参加を呼びかけ、RE100と RE Actionの両輪で再エネ需要を結集し、拡大させる。これによって、再エネ電力の低価格化も可能となり、好循環を形成するという仕組みを図4に示している。

図4 電力の需要家を「RE100とRE Action」に結集させて好循環を形成する仕組み

図4 電力の需要家を「RE100とRE Action」に結集させて好循環を形成する仕組み

出所 記者発表資料「再エネ100宣言 RE Actionの意義」、2019年10月9日

〔3〕リーズナブルな料金で再エネを利用できる

 図5は、従来の電気料金とFIT入札価格を示したものである。

図5 2つの組織「RE100と再エネ100宣言 RE Action」で再エネの取組みを拡大

図5 2つの組織「RE100と再エネ100宣言 RE Action」で再エネの取組みを拡大

※1 一般社団法人低炭素投資促進機構「太陽光第3回入札(平成 30 年度下期)の結果について」、2018年12月18日(2019年1月21日更新)
※2 一般社団法人低炭素投資促進機構「太陽光第4回入札(令和元年度上期)の結果について」、2019年9月3日(2019年10月18日更新)
出所 記者発表会資料「再エネ100宣言 RE Actionの意義」(2019年10月9日)に編集部が追加修正

 図5の左側に示す、RE100の対象となる大企業の多くは産業用の特別高圧(受電電圧が20,000V以上)を契約しており、その電気料金は約10〜13円/kWhだ。また、右側には、一般家庭用(受電電圧:100〜200V、低圧:電灯契約)の電気料金は約22〜24円/kWh程度であることも示されている注4

 一方、図5の上部に赤字で示すように、2018年のFIT入札の最低落札価格(低炭素投資促進機構の発表、図5下段の※1参照)は、約14.3円/kWhであったが、これに託送料や営業費用を乗せると、産業用の料金よりもかなり高くなるが、家庭用料金から見ると同等か少し高い程度の料金となる。

 これに対して2019年のFIT入札の最低落札価格は、約10.5円/kWh(低炭素投資促進機構の発表、図5下段の※2参照)と、さらに安くなったため、価格面からも再エネを利用するハードルが低くなってきている。このためRE Actionは、図5の中央部に示すに示す高圧(6,000V)から低圧(受電電圧:100〜200V。動力契約)を使用し、日本の消費電力の40〜50%を占める400万団体に、小売電気事業者がリーズナブルな料金で再エネを提供できるようになり、400万団体のRE Actionへの参加を促進できると期待している。

 さらに、2019年11月から太陽光発電(再エネ)の卒FIT市場が登場することもあり(後出)、今後の再エネの利用が拡大し、RE Actionへの参加が拡大していくことも期待されている。


▼ 注4
https://www.ennet.co.jp/column/price_mechanism/

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