政府の2050年カーボンニュートラル宣言とJCLPの提言
〔1〕「第6次エネルギー基本計画」にどう反映されるか
日本政府は、2050年までに室温効果ガスの排出を全体としてゼロにする、「2050年カーボンニュートラル(CO2排出量実質ゼロ)」を、2020年10月に宣言した。これを受けて、経済産業省を中心として、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が2020年12月に発表された注2。
このグリーン成長戦略には、今後、成長が期待される洋上風力発電や水素産業をはじめとする14分野の重点産業において、高いCO2削減目標を設定して取り組むことになった。
このような政府の宣言が、2020年10月から検討が開始されている「第6次エネルギー基本計画」にどのように反映されるのか。あるいは、パリ協定の中期目標(2030年目標)として、すでに国連に提出済みの日本の温室効果ガス削減目標(26%削減)を、いかに引き上げることができるのか。
2021年11月に英国・グラスゴーで、気候変動に関する国際会議「COP26」注3の開催が予定されていることもあり、注目されている。
〔2〕JCLPからの政府への提言
政府の新しい宣言に対して、JCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ、表1参照)は、歓迎の意を表明するとともに、その達成に向けた「長期エネルギー需給見通し(エネルギーミックス)の見直しに向けた提言」を発表した(表2)。
表1 JCLPのプロフィール(敬称略)
出所 右記のWebサイトを参考に編集部で作成、https://japan-clp.jp/about/organization https://japan-clp.jp/
表2 JCLPのこれまでの発表内容
出所 JCLPのプレスリリースをもとに編集部で作成、https://japan-clp.jp/archives/6630 https://japan-clp.jp/archives/7798
この提言を発表した背景には、気候危機を回避するために世界各地でエネルギー市場が大きく変化する中、脱炭素政策の遅れが日本企業の国際競争力を低下させてしまうことに対する、産業界の強い危機意識がある。
≪提言の骨子≫
- エネルギーミックスにおいて「2030年再エネ比率50%」を掲げる。
- 非効率な石炭火力発電所のフェーズアウトと新規の石炭火力発電所の建設中止。
- エネルギーミックス検討における基本事項の改定:「S+3E」から「2S」への変更※1や経済効率性の「国民負担」の考え方等。
- 再エネ市場の活性化に向け、オフサイト型コーポレートPPA※2を可能とする環境整備を実施し、新型コロナ禍からの経済回復策として再エネ送電網整備等を位置付ける。
※1S+3Eから「2S(Safety&Sustainability)」へ、基本原則の改定を求める。
現行のエネルギーミックスは、安全性(Safety)を大前提とし、自給率(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を同時達成する(S+3E)」としている。しかし、気候危機において、環境適合性は経済効率性と同列ではなく、それ以上の重大性をもつ。気候危機回避、自給率改善、経済の持続的発展を包含する「持続可能性」(Sustainability)を、「安全性」(Safety)と併せて基本原則とすることを求める。
※2コーポレートPPA:Power Purchase Agreement。需要家が発電事業者から直接電力を購入する契約形態。自社敷地内の再エネ設備を用いたものはオンサイト型コーポレートPPA、遠隔地の再エネを送電線経由で調達するものはオフサイト型コーポレートPPAと呼ぶ。
▼ 注1
Ms. Aleksandra Klassen
Senior Impact Manager, RE100 at The Climate Group
▼ 注2
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201225012/20201225012-2.pdf
▼ 注3
COP26:26th UN Climate Change Conference of the Parties、第26回国連気候変動枠組条約締約国会議