NTTアノードエナジー中期ビジョン
〔1〕NTTアノードエネジーのB2B2Xモデルとは?
―編集部 2019年11月12日に発表された「NTTアノードエナジー中期ビジョン」注3における、「B2B2Xモデル」とは、どのようなビジネスモデルでしょうか。
谷口 B2B2Xとは、「Business to Business to X」の略です。私たちNTTアノードエナジー(B:パートナー)はサービスを開発し、その開発したサービスを顧客層をもつサービス提供者(B:メインプレーヤー)から、エンドユーザー(X:個人・企業)にサービスを提供してもらうビジネスモデルです。したがって、NTTアノードエナジーは主役(メイン)ではなく、あくまでもサービス提供者のパートナーとなる、という関係になります。
エネルギーは、ある意味で世の中の血液の1つのようなもので、隅々まで循環していくことが求められます。私たちの顧客接点だけで、サービスや役割を広く使っていただくのは(循環させていくのは)なかなか難しいので、このビジネスモデルによって、いろいろなパートナーとコラボレーションして、エネルギーの価値や役割を提供していきたいと考えたのです。これが、B2B2Xモデルを指向する大きな意味なのです。
〔2〕2025年に売上規模6,000億円を目指す5つの事業
―編集部 具体的な5つの事業についてお聞かせください。
(1)電力小売事業とグリーン電力発電事業
谷口 図3の5つの事業を積み上げて、2025年に売上規模6,000億円を目指しています。
まず、5つの事業のベースとなるのが「電力小売事業」です。これについては、エネットが2000年から取り組んできていますが、NTTアノードエナジーも2019年9月9日付けで小売電気事業の登録を受け、翌9月10日より事業を開始しています。
図3 5つの事業展開(B2B2Xモデル)
最近では、よりグリーンな電気に対するニーズが増えてきていますので、それに対応していきます。例えば、IoTを導入したり、EMS(エネルギー管理システム)を導入したりすることで電気の価値を高め、小売事業を拡大していきます。
小売事業を支えるものが「グリーン電力発電事業」です。グリーン電力発電事業は、6年間で電力出力容量450万kWを目指していきます。この程度の規模のボリウムを目標にしないと、小売事業を行う中でのエネルギーミックス(火力や水力、太陽光、風力など複数の電源構成)の中に占める再エネ分が賄っていけないと考えています。当面は、すでにある地産地消電源やFIT電源を活用して進めていきます。
(2)バックアップ電源事業とVPP(仮想発電所)事業
谷口 図3に示す「バックアップ電源事業」「VPP(仮想発電所)事業」の2つは、蓄電池をベースにした事業で、顧客価値創造の代表的なサービスとなるものが、「バックアップ電源事業」となります。この事業は私たちのビジネスのキモであり、電気の価値をより高めるサービスとなります。
NTTアノードエナジーのサービスを使っていただくと従来の電源を補完し、従来の電源よりもレジリエンス性の高い電源となり、例えば系統の電源が途切れてもバックアップできたり、EVが駆けつけて救済したりできます。
さらに、技術開発が進んで高度化すると、例えば蓄電池をユーザーの近くのNTT局舎〔全国に7,300の電話局の局舎(通信ビル)がある〕に置いておき、局舎とユーザー間を直流線で結んで、災害時に電気を供給(直流給電)できるようにすることも考えています。
図3の左側のようにコミュニティを蓄電池、EV、直流線(直流エリアグリッド)で結び、系統の交流網が停電しても非常時に電源を使いたいというユーザーに、信頼性や安全性を加味して電力をお届けするというイメージです。
しかし、直流給電の利用の安全性確保や距離を延ばすための技術検証などが、まだ必要です。もともとNTTは、通信用の電力は直流で行っていましたので、そのノウハウや知見はありますが、外部に送電した経験はないので、2019年度末までに実証設備を構築し、実証をスタートさせていきます。実証で信頼性や安全性をクリアし、確認できたところから、順次サービスを提供していく予定です。
より対災害性(レジリエンス)を必要とするユーザーには、直流給電による高度なサービスを提供し、そうでないユーザーには、
①PV(太陽光発電)と蓄電池、さらに②EV(電気自動車)を発動するなどのサービスを提供する、2種類のサービスを想定しています。NTT全体では、現在、工事用車両等を除く普通自動車・軽自動車の保有台数は1万台ですが、これを将来的にはEV100%にすることを目標にしています。
「VPP(仮想発電所)事業」では、バックアップ電源として設置した蓄電池(EVも含めた)を使って、充電した電力を平常時も活用できるサービスを提供します。2025年にはVPPで使えるリソースとして、60万kW、つまり大規模な火力発電所1基の代替となるくらいの調整力の確保を目指しています。
バックアップ電源は、エンドユーザーの価値を生み、VPPは需給調整の価値を生むことになります。これが実現すると、街や地域全体で、よりレジリエンス性の高い仕組みを提供できるようになります。
(3)新サービス事業
谷口 最後に、「新サービス事業」ですが、EVがIoTでネットワーク化されると充電環境が整備され、またAIやIoT、ICTを活用してエネルギーデータのプラットフォーム、つまり電力関連機器の故障の特定や、メンテナンス人員の居場所を特定できるようになります。このことが、レジリエンス性の高い価値を生みます。