分散エネルギー基盤への積極投資:投資規模1,000億円/年
―編集部 2025年までに分散エネルギー基盤への投資規模が1年あたり1,000億円と発表されていますが、具体的にお聞かせください。
谷口 先にご説明したような、新しい事業を進めるうえでは、投資をしていかないといけません。毎年1,000億円を、「再エネ」「EV関連」「蓄電池」「ICT」分野に、2025年までに合計6,000億円投資していきます(図4)。このうち、再エネと蓄電池への投資の比重が一番高くなっています。
図4 分散エネルギー基盤への積極的な投資
当初は、6年間で、主に自治体が必要とする防災拠点や病院、コンビニなどの災害時の協定を結んでいる企業などを中心に2万件を目指して、バックアップ電源サービスの提供を目標にしています。
ただし、当社の6,000億円の投資だけで、レジリエンス性の高い環境が実現できるわけではないので、各分野のパートナーとの資本提携や業務提携、出資などを、積極的に働きかけていきます。当社が仕組みを提供して、パートナーの方々がユーザーにサービスを提供していただく(すなわちB2B2Xのビジネスモデル)ということです。
2019度中には、多種多様な分野でアライアンスを組んで、新サービスや商品ラインを打ち出していければと考えています。
脱炭素社会への取り組みと変革する電気の価値への挑戦
―編集部 NTTは、2018年10月29日に「EP100」注4と「EV100」注5に加盟注6していますが、御社の脱炭素社会への取り組みを教えてください。
谷口 「EP100」と「EV100」への電気通信事業者の加盟は世界で初めてです。
近年は、データセンターなども増えているので、電力消費量自体も増えてきています。そのような中で、NTTは日本全国の電力使用量(9,000億kWh/年)の約1%弱(65億kWh/年)を使っていますので、CO2排出量を削減する社会的責任があります。
そこでNTTとしては、まずエネルギーの使用量を、ICT技術で効率化して、電力使用量を適正化し、より使う量を減らしていくなど、高度な使い方を推進していくということで、EP100、EV100を宣言しています。
同じNTTグループの中で、NTTアノードエナジーとしては、「分散型のエネルギーシステムの仕組みを作り」「再エネを加速させて、エネルギー自体の価値をどう高めるか」という両輪でしっかり事業を進めていきたいと考えています。これが、社会課題の解決にもつながり、エネルギーそのものの価値や役割も、より高まるのではないかと考えます。
これまでは電気はkWh(電力容量)の価値であったのが、徐々にkW(電力出力)の価値が出てきたり、ΔkW(デルタキロワット。調整用電力)の価値が出てきたり、さらに、電気が途切れている時に利用できる電気は、防災の価値をもってきたりなど、電気の世界は大きく変革してきています。
このように、私たちは、エネルギーの価値自体を、より高める役割を担って、事業を進めていくことを目指しています。
―編集部 ありがとうございました。
▼ 注4
EP100:Energy Productivity 100。事業のエネルギー効率を倍増させること〔省エネ効率を倍増(100%)させること〕を目標に掲げる企業が参加する国際的イニシアティブ。
▼ 注5
EV100:Electric Vehicles 100。企業によるEV(電気自動車)100%の使用や環境整備促進を目指す国際的イニシアティブ。